【イメージ写真】景観政策の見直しが進められている京都市街

【イメージ写真】景観政策の見直しが進められている京都市街

 京都市は10月20日、高さ制限を超える建物を一定の条件下で認める「特例許可制度」について、新たに許可対象を追加する規定案を明らかにした。これまでは学校や病院といった公的施設が主な対象だったが、民間にも拡大する。規定上は市が定める手続きと審査を経れば、市全域で規制を超える建物の建築が可能になる。

■京都市内はオフィス不足、子育て世帯流出

 この日の市議会まちづくり委員会で公表した。特例許可制度は、新景観政策が始まった2007年、地区や建物単位のきめ細やかなまちづくりを目的に導入。これまで新築8件が許可され、うち7件を大学や病院などの公的施設が占める。今回の許可対象拡大は、市内のオフィス不足や子育て世帯の流出を背景に、新景観政策で設けた厳しい高さ規制を実質的に緩和し、周辺部などに建物の新築を促す狙いがある。

 市は追加の許可対象としてオフィスやマンションなどを想定。必要な手続きとして、市や地域住民との事前協議を定めた。事業者は構想段階で、周辺の景観やまちづくりの各種計画、ビジョンと合致するかを検討。住民意見を踏まえ、緑地などのオープンスペースや集会所などを計画に盛り込むことが必要となる。建築後は、建物の維持管理や地域活動状況の報告も求める。

 規定案では事業者と協議する地域の範囲や高さ規制の超過上限、許可基準などは定めておらず、市は建物の規模や周辺の環境などを個別に考慮して決める考え。協議対象となる地域の範囲としては、町内会や自治連合会、地域景観まちづくり協議会などを想定している。

■11月25日までパブコメを募集

 市は10月27日~11月25日にパブリックコメントを実施し、都市計画審議会での審査を経て、来年度当初からの運用を目指している。市景観政策課は「今までの景観政策の骨格を維持することが前提になる。まちづくりや地域の魅力向上につながる建物の建築を誘導していきたい」している。

■緩和には住民反発も、規定案の中身も曖昧

 京都市が上限を超える高さの建物を認める「特例許可制度」を見直す背景には、新景観政策の「負の側面」がある。厳しい規制によって土地利用が制限され、まちの空洞化につながった。観光客が急増したコロナ禍までは条件のいい土地に次々とホテルが建設され、オフィス不足や子育て世帯の流出といった新たな課題が生じてきた。

 だが、市がいざ見直しに乗り出すと市民の反発は大きかった。おととしから昨年にかけての有識者会議。市が緩和の対象地域の例として御池通沿道を示すと、地域で景観保全に取り組む団体が猛反発した。以後、御池通沿道の名前が資料に記載されることはなくなった。

 今回の新たな規定案でも抽象的な表現が目立つ。許可対象は、地域のまちづくりの「ビジョン」に合致し、地域に「貢献」する建物というが、まちづくりの将来像を定めている地域は少なく地域への貢献度合いを誰がどう判断するかも曖昧だ。

 許可を受けるまでの手続きも複雑で、事業者にとって魅力に映らなければ、硬直化した制度に柔軟性を持たせようという狙いは外れる。一方、建物の種別を問わず事実上の緩和を認める内容に市民からは反発も予想される。京都にとって百年の計とされる新景観政策を変更するだけに、市には丁寧な説明が求められる。