タイで民主化を求める若者らの反政府デモが続いている。

 政府は15日に出した非常事態宣言で5人以上の集会を禁じ、デモ隊を強制排除したり、デモを生中継するネットメディアへの圧力を強めたりしている。

 だが力で抑え込もうとしても、問題の根を深めるだけだろう。

 若者らの要求に耳を傾け、民主化を前に進めることでしか解決の道は見えてこない。政府の歩み寄りを求めたい。

 6年前のクーデターで軍政となったタイは、昨年春の総選挙で民政に移行した。

 だが、民政といっても名ばかりで、政治への軍の影響力は憲法で保障され、首相には元陸軍トップのプラユット氏が就いた。

 反政府デモのきっかけは、今年2月に若者の支持を集める野党が政権寄りの憲法裁判所から解党処分を受けたことだ。

 若者らは強権政治に対し、首相退陣のほか、政治への軍の介入を許す憲法の改正、解散・総選挙の実施などを求めている。

 とりわけ注目されるのは、これまで議論することさえタブー視されてきた王室改革にまで踏み込んでいる点である。

 タイには王室の名誉を傷つけると最高で禁錮15年となる不敬罪がある。その廃止だけでなく、莫大な王室予算の削減、国王の権限縮小などを公然と訴えている。

 背景には、広く国民から敬愛され、しばしば対立する勢力の仲裁役も担ったプミポン前国王が亡くなったことがある。

 跡を継いだワチラロンコン国王は、国民がコロナ禍にあえぐ中、1年の大半を別荘のあるドイツで過ごすなどし、国民に寄り添っていないとの不満が若者を中心に広がっている。

 ただ、王室を熱烈に支持する国民は今なお多く、性急に結果を求めようとすれば、新たな国民分断の火種になりかねない。

 時間をかけ、広く合意形成に努めることが肝要だろう。

 政府は事態の収拾策を与野党で話し合う臨時国会を26~27日に召集し、憲法改正についても議論を再開する。

 デモを沈静化させるためとみられるが、平和的な改革の道を目指し、混乱をエスカレートさせない冷静な議論が必要だ。

 タイに多くの企業が進出する日本の役割も重要である。

 経済交流を進めるだけでなく、真の民政移行に向けた働きかけを国際社会とともに強めたい。