新型コロナウイルスの感染拡大が出生数にも響いているようだ。

 全国の自治体が5~7月に受理した妊娠届の件数が、前年同期比で1割強も落ち込んでいることが厚生労働省の集計で分かった。

 来年生まれる子どもの数は、大幅に少なくなる見通しだ。

 コロナ禍で、出産・子育て環境や雇用状況が悪化していることが背景にあるとみられる。

 出生数は2019年に過去最少の86万5千人となり、「86万ショック」と呼ばれたばかりだ。妊娠を控える傾向が続けば、来年は80万人割れとなる可能性もある。

 少子化の進行に拍車がかかりかねない。これまでの少子化対策を点検し、コロナ時代を見据えた新たな具体策が求められよう。

 妊娠届の件数は、感染不安が高まった3月ごろに妊娠した人が届ける5月の減少率が最も大きく、全国では前年同月比17%減となった。都道府県別の減少率では山口の29%が最大で、京都は同18%、滋賀は同10%だった。

 妊娠が減った理由として、感染防止対策に不安を抱く人が増えているとの指摘がある。

 通院を抑制したり、不妊治療を延期したりする事例が見られたという。入院中の面会や出産時の立ち会いを断られたケースもある。

 政府は現在も「里帰り出産」の自粛を求めており、妊産婦が孤立感を深めると懸念されている。

 雇用悪化が家計を直撃している側面も見過ごせない。第2子以降の出産をためらう「2人目の壁」の大きな理由は経済的問題にあるといわれる。世帯収入の低下は家庭の教育費を左右する。

 こうした不安定な状況では、コロナ収束まで妊娠を先延ばししようと考えるのも無理はない。

 感染を抑えながら雇用を回復させるのは難しい道のりだ。経済的支援の拡充も含め、できる対策を地道に重ねるしかない。

 菅義偉政権は、男性が育児休業しやすくする制度導入や不妊治療の保険適用拡大について検討を進めている。こうした「平時」の議論を再点検し、妊産婦やこれから妊娠を望む人の不安をやわらげる方策を示す必要がある。

 オンラインによる相談や妊娠・出産に関する情報提供を充実させる体制整備が必要ではないか。

 日本産科婦人科学会も、妊娠中や今年出産した女性がコロナについてどんなつらさを感じ、どこに相談したかを調査するという。

 経験談を多くの機関が共有し、具体策に生かしてほしい。