見えないだけに不気味だ。

 東京五輪・パラリンピックを標的にサイバー攻撃が仕掛けられていた、と英政府が発表した。

 これまでの五輪でもサイバー攻撃が確認されている。来年夏に延期された東京大会だが、新型コロナウイルス感染拡大とともに懸念材料であり、大きな脅威と言えよう。

 コンピューターネットワークに支障が出れば、五輪だけでなく広範囲に重大な影響が及びかねない。対策を絶えず更新しながら、防御を強化していく必要がある。

 攻撃したのはロシア軍参謀本部情報総局(GRU)と英政府は名指ししているが、ロシア側は全面否定している。

 コロナの影響で東京大会の延期が決まった3月より前の時期に、主催者や物流業者、スポンサー企業を狙って偵察行為があったという。しかし、それ以上の発表はない。

 大会組織委員会は「事柄の性質上、詳細を公にできない」と説明する。被害はなかったというが、事態の全容を明らかにすれば、手の内を読まれる恐れがあるというのが、サイバーセキュリティーの世界での考えのようだ。仮想空間での暗闘がうかがえる。

 サイバー攻撃は大舞台で威力を見せつけようとする。2018年の平昌冬季五輪では開会式の最中に組織委のサーバーを破壊、公衆無線LANが一時使いづらくなった。16年のリオデジャネイロ五輪では選手の医学的情報などが流出。12年ロンドン五輪でも公式サイトに2億回超の不正アクセスがあり、開会式の電気系統システムがサイバー攻撃の予告を受けた。

 東京大会に向け政府が危機感を強めたのは当然だ。大会会場だけでなく重要インフラを狙い、停電や交通まひを起こすことも考えられる。実際に三菱電機を狙ったサイバー攻撃で防衛省など政府機関や電力、鉄道、通信などの一部情報が流出している。

 政府は昨年4月、五輪での司令塔となる「サイバーセキュリティ対処調整センター」を発足させた。今年1月には総務省の有識者会議が緊急提言を出し、攻撃手法などの官民情報共有や自治体の防護演習参加、脆弱(ぜいじゃく)機器の検知を求めている。対策は急務だ。

 これまでのサイバー攻撃でロシアのほか中国、北朝鮮のハッカー集団の関与が指摘されているが、いずれも否定している。

 サイバー攻撃を封じるには、国際的な連携が欠かせない。東京大会の成否がかかっていよう。