京都市が、新景観政策で定める建築物の高さ制限の一部見直し案を公表した。一定の条件下で上限を超える高さの建物を認める「特例許可制度」の対象を、民間にも拡大するとした。

 特例はこれまで、学校や病院などの公的施設が主な対象だった。制度の見直しで、オフィスビルやマンションも市全域で高さ制限を超えての建設に道が開かれる。

 市は、オフィス不足やマンション価格の高騰による子育て世帯の流出に危機感を募らせている。高層建築に歯止めをかけ、土地利用を制限した新景観政策の弊害だとの指摘もある。

 特例の拡大でこうした「負の側面」の解消を目指すというが、規制の形骸化につながる可能性がある。歴史的な京都の街並みを守る新景観政策と整合性がとれるのか、慎重に検討すべきだ。

 特例許可は、病院などの建物がその機能を確保する上で欠かせない場合に高さ規制を緩和する制度で、2007年の新景観政策スタート時から設けられている。

 現行制度でも、優れたデザイン性を持つ建物であれば民間も申請できるが、許可に時間がかかることから敬遠する事業者が多く、これまでの許可物件は新築8件にとどまっている。

 市は特例拡大にあたり、対象を「まちづくりに貢献する建築物」に限定し、建築計画の構想段階から市や地域住民と対話するよう事業者に求めた。民間の土地活用を促す一方で、安易な申請に予防線を張った形だが、何が「貢献」にあたるのか、どこまでの高さを認めるか、などについて具体的な基準を示していない。

 建物規模や周辺の環境などを個別に考慮して許可するかを決めるというが、恣意(しい)的な運用への懸念は拭えず、市民の不信感を高めかねない。景観に配慮して土地利用を進めたい事業者にとっても、建物完成までの道筋が描きにくいのではないか。

 高さ制限の緩和は人口減や経済問題への対応が背景にあるが、まちの活性化を重視するあまり、景観政策の理念をないがしろにしてはなるまい。

 マンションの高騰などは、ホテル開発につられた地価上昇が招いた側面もある。そうした状況はコロナ禍で一変している。

 特例制度を使った規制緩和の拡大は、「百年の計」とされる新景観政策の大きな転機となりうる。幅広い市民を巻き込んで丁寧に議論を積み重ねていく必要がある。