京町家のゲストハウス「近よし」の宿主田中芳幸さん。この半年間で宿泊客がわずか数組だった部屋を見つめる(京都市下京区)

京町家のゲストハウス「近よし」の宿主田中芳幸さん。この半年間で宿泊客がわずか数組だった部屋を見つめる(京都市下京区)

 新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けた観光業界を支援する「Go To トラベル」の事業開始から3カ月たった。京都市内では紅葉が見頃を迎える11月下旬の予約が満室となるホテルも続出。絶大に見えるGoTo効果だが、割引額が少ない格安のゲストハウスは「恩恵が全くない」と断言し、内情は宿泊施設の規模によって大きく違う。立て替え金が振り込まれず苦しむ旅行会社も相次ぎ、追い風となるはずの施策の陰で悩む事業者は多い。

 簡易宿所の7割超が2020年4~9月の毎月、売上高が対前年比80%以上減少―。京都簡易宿所連盟(下京区)が15日に公表した調査結果は、衝撃的な数字が並んだ。下京区のゲストハウス「近よし」も苦しむ宿の一つだ。経営する田中芳幸さん(50)は「GoTo効果は一つもない」と唇をかむ。

 築約120年の京町家を売りにし、コロナ前まで若者や訪日観光客(インバウンド)から人気を集めた。しかし、状況は一変。3、4月の予約は全てキャンセルになり、開店休業状態となった。GoTo開始後も宿泊客は数組しかなく、収入はほぼ途絶えたままだ。

 国土交通省によると、9月末まで宿泊でGoToを利用した人のうち、宿泊料が1泊1万5千円未満が8割を占める。「価格帯の高低にかかわらず、幅広く利用いただいている」。赤羽一嘉国交相が示した認識に対し、田中さんは「現場のことを何も分かっていない」と憤る。

 町家の維持費もかさむ中で、11月以降も予約は低調なままだ。追加の補助金や割引率ではなく一律の値下げなどの対策を求めているが、「政府に声が届かない」とこぼす。

 運営も混乱が続く。個人旅行のツアーなどを手掛けるアルファトラベル(中京区)によると、7月から立て替えた割引分の数百万円がいまだに振り込まれていないという。森野茂社長は「予約状況は好調なのに、立て替え金が経営を圧迫する本末転倒な状況」と明かす。