全国の小中高校、特別支援学校で2019年度に認知されたいじめの件数は61万2千件で、前年度よりも6万8千件増加して過去最多となった。

 調査に当たった文部科学省は、「早期介入方針の定着の結果」などと肯定的に評価する。ただ、心身に大きな被害を受け、不登校にも至るような「重大事態」は2割増えており、早めの対応で状況改善が進んでいるとは言いがたい。

 専門家は、いじめに対する学校側の認識は依然として甘いと指摘する。被害者側に問題があると言わんばかりの対応も多く、1年以上にわたって被害を訴えてからようやく重大事態と認められた事例もあるという。

 国連児童基金(ユニセフ)の今年の報告によると、日本の子どもは「精神的な幸福度」が先進・新興国の中で最低レベルだった。家庭間の経済的格差の拡大や、行き過ぎた受験競争など社会のひずみが教室にも現れているのではないか。

 今回の調査には反映されていないが、今年に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大により、感染者や医療関係者の家族への中傷、授業の過密化によるストレスなどにも注意が求められよう。

 いじめの具体的な内容では、インターネット上の掲示板や会員制交流サイト(SNS)への書き込みによるトラブル増加も特徴の一つに挙げられる。文科省は、中学校へのスマートフォンの持ち込みを解禁する方針を示しているが、他者を安易に傷つけない適切な使い方で合意形成が必要だ。

 いじめのない学校づくりに向けて、全国の弁護士会は「法教育」の出前授業を始めている。そこでは、幸福追求権や公共の福祉について記された憲法13条などを題材に、いじめの不当性を分かりやすく解説している。かつていじめに遭った当事者が、自身が受けた苦しみや支援を得るに至った体験を語る活動も広がっている。

 また、弁護士が、学校で起こるさまざまな問題に助言したり、保護者との相談に当たったりする「スクールロイヤー」の導入も進んでいる。

 学校教員は、過労死ラインを超えるような業務実態の存在が指摘されている。多忙で閉鎖的な現場で問題を解決するのは難しい。

 いじめの防止のためには、普段の授業づくりから家庭との連絡に至るまで、専門性や客観性を備えた外部の協力を適切に得る視点も大切ではないか。