妻の父親を岳父と言い習わすのは中国の故事による▼唐の玄宗皇帝が「泰山(泰岳)」で儀式を行った。宰相の張説を責任者に命ずると、張説の娘婿までもが昇進した。「泰山には霊力がある」「張説には娘婿を出世させる実力がある」。人々はこう言って張説を岳父と呼んだという▼江戸時代、造園や茶に長じた小堀遠州が岳父藤堂高虎に宛てた書状が3月19日まで大阪市の大阪城天守閣で公開されている。1615年の大坂夏の陣で焼けた大坂城の再築を任された遠州が「大坂はゆくゆく(徳川の)御居城にもなさるべきところ」と記しており、同時期に「大坂幕府」の構想があったのでは、と先頃、話題になった▼義理の父子だった2人ともが城や御殿の普請を担う能吏として幕府で働いた。遠州に関する著作がある長浜市学芸専門監の太田浩司さんは「2人は技術官僚として馬が合ったのでは」と推し量る▼核家族化が進んだ現在、義理の親子は程良い間合いを測るのが難しい。漫画「サザエさん」の波平とマスオのような間柄は遠い昔だ▼高虎は現在の滋賀県甲良町、遠州は長浜市と、共に近江から出た。遠州にとって高虎はそびえ立つ存在であると同時に同郷の気安い仕事仲間でもあったのかもしれない。時代が違うとはいえ少々うらやましくも映る。