糸を吐き始めた蚕をより分ける職員(京丹後市弥栄町・新シルク創造館)

糸を吐き始めた蚕をより分ける職員(京丹後市弥栄町・新シルク創造館)

 シルク産業の集積地を目指す京都府京丹後市は先月末、京都工芸繊維大(京都市)と共同研究してきた年間を通じて人工飼料で蚕を育てる無菌周年養蚕の技術を確立したと発表した。基礎研究の成果を民間に託し、輸入に頼る生糸の国内生産とブランド化、化粧品や医薬品への繭成分の活用など、新たな産業創出を目指す市の展望を探る。

 同市弥栄町の研究施設「新シルク産業創造館」。無菌室で職員の岸本絹人さん(25)が成熟期の蚕をより分ける。「1サイクルで20万頭の飼育目標を達成した。昔のように養蚕などシルク産業が活気づけば」と願う。

 市が養蚕研究に乗り出した背景には、織物業者の原料確保への危機感がある。中国からの輸入に依存する生糸は中国の経済発展もあり生産が縮小。大日本蚕糸会によると、2017年までの15年間で輸入量が6割以上減少、価格も上昇した。国外からの供給が途絶えれば丹後という国内最大の絹織物産地が埋没する恐れがあった。

 市は15年から約3億5千万円かけて旧溝谷小に研究施設を整備。当初、市が中心となり養蚕から製品化までを実施する計画を立案した。だが、16年春に市長が交代し、同大学との基礎研究のみを残して製品化は民間に委ねるよう方針を転換して計画を進めてきた。

 研究は同大学の森肇教授の指揮で効率的に安定して繭の生産ができるよう無菌周年養蚕に取り組んだ。飼育室の室温を管理し一貫して人工飼料で飼育し、18年8~10月には施設の上限である20万頭の大量飼育にも成功したという。

 16年11月の稼働から昨秋までに生産した繭は群馬県の製糸会社に依頼し62キロの生糸に仕上げた。桑の葉がない季節での生産が可能となり、生糸は従来より白いのが特徴という。

 森教授はビジネス化する上で飼育コストを課題に挙げる。全て人工飼料で飼育した場合の餌代や施設の光熱水費などを考慮すると、輸入生糸の10~12倍の価格となるため、餌の9割を消費する成熟期を桑の葉で飼育するなどの工夫が必要という。質については「実際に織ってみてどのような性質の織物になるか調べて改善していきたい」とする。保湿効果や抗酸化作用があり化粧品での活用が期待される繭の成分セリシンの研究も蚕の遺伝子を組み換えるなど研究を進めている。

 市は20年度に研究を終え、21年度以降は民間企業に施設を貸し事業化してもらう方針だ。養蚕は2社から問い合わせがあり、繭の利用についても試用を求める声があるという。市商工振興課は繭を使う多様な業種の施設への入居を進めたいといい、高橋尚義課長は「企業同士が縦と横の連携をしてシルクによるまちづくりを具現化していきたい」と話す。