親による体罰を法律で禁止すべきか。千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さんが死亡した事件を受け、国が児童虐待防止法など関連法改正の検討を進めている。

 子どもを懲らしめる「懲戒権」規定を民法から削除するよう求める声も自民党内から出ている。東京都は既に全国で初めて体罰禁止を盛り込んだ条例案を都議会に提出した。議論を深め、社会の意識を変える契機としたい。

 心愛さんの事件で逮捕された父親は冷水シャワーをかけ続けたことを「しつけのつもりだった」と供述。東京都目黒区で昨年起きた5才女児虐待死を含め、過去の事件で逮捕された多くの保護者からも同じような言葉が聞かれた。

 民法は「子の利益のため」との前提付きで、親が監護や教育など必要な範囲で子を戒めることができると定めている。

 この懲戒権が「しつけ」と称する体罰の口実に使われてきた。虐待事件の大半は体罰がエスカレートしたとみられる。

 「たたくのもしつけ」という考えは根強い。国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が昨年発表した調査では日本の大人の6割近くが、しつけに伴う体罰を容認していた。

 こうした社会の風潮と、体罰容認の余地を残す懲戒権は深く関わっている。そこに虐待を生む「土壌」があるなら法規定のあり方も見直す必要がある。

 日本で虐待が高い頻度で報告されていることを懸念し、国連の子どもの権利委員会は今月、対策強化を政府に勧告した。こうした中、体罰禁止の法制化の動きが与党内で加速している。

 ただ課題もある。親による体罰を禁止すれば、子どもへのあらゆる有形力の行使が法律違反だと解釈されかねない。

 教育現場では学校教育法で禁止し、殴る蹴るのほか室内の閉じ込めなど体罰行為を通知で定めるが、保護者にとっては悩ましい。「必要なしつけすらできなくなってしまうのでは」との困惑の声も聞こえてきそうだ。

 それでも体罰を法律で禁止している国は54カ国に上る。世界で初めて禁じたスウェーデンでは法制化後に社会の意識が大きく変わり、体罰を容認する人の割合は1割に減ったという。

 大半の国は具体的な行為を定めていない。体罰に頼らないしつけに努めることや暴力根絶の理念を掲げるだけでも一定の歯止めになるのではないか。虐待防止へ国が強い姿勢を示すという意義は大きいだろう。

 体罰は子どもの心身の成長に悪影響を及ぼすとされる。何より大切なのは、たたかず、怒鳴らない子育てができるよう保護者への支援を強めることだ。

 こうした暴力の背景には経済的な困窮や夫婦関係の悪化、地域での孤立といった要因がある。児童相談所は体制充実と併せ、関係機関と連携して現場対応を着実に強化してほしい。

 暴力で子どもを従わせる行為はしつけではなく、支配だ。さまざまな理由で子どもを懲らしめたくなっても、一度立ち止まって考えるべきではないか。社会全体にその認識を広げていきたい。