「ママ講師」から育児の話を興味深そうに聞く生徒たち(京都市伏見区・京都聖母学院高)

「ママ講師」から育児の話を興味深そうに聞く生徒たち(京都市伏見区・京都聖母学院高)

 育児中の保護者が0~3歳までの子どもと一緒に学校などを訪れる「赤ちゃん先生」と呼ばれる取り組みが、京都でも始まった。事前研修を受けた母親たちがボランティアではなく仕事として活動し、報酬を受けるのが特徴。全国各地でこれまでに5千回以上開催され、学校のカリキュラムとして取り入れる自治体もある。育児中の女性が社会と関わる新たな回路として、京都での広がりを注視したい。

 1月中旬、京都市伏見区の京都聖母学院高。そろいの緑のTシャツを着た親子連れが教室に姿を現すと女子生徒たちの目の色が変わり、歓声が上がった。

 乳幼児とその母親6組を交えて車座になり、母親たちが自身の体験を元に子育ての大変さや尊さ、子への思いを語りかける。生徒たちは子との触れ合いを楽しみつつ、途中でぐずって泣き出すと懸命にあやした。女子生徒の一人(16)は「夜泣きは大変そうだが、自分の子を大切に育てたいというお母さんの思いが伝わった」と感想を述べた。2歳の息子と参加した女性(33)=同見区=は「自分の育児を振り返るきっかけになり、何をしてもかわいいと言ってもらえるので自己肯定感も高まる」とやりがいを話す。

 この取り組みは「育児中がメリットになる仕事を」とNPO法人「ママの働き方応援隊(ママハタ)」(神戸市)が2012年から本格的に始めた。0~3歳児の母親が有料の養成講座を受講して「ママ講師」に登録する。1回の活動につき現金で謝礼を受け取る仕組みだ。

 合田三奈子理事長は「子育て中は日常生活の課題に直面しやすい。地域と関わりを持ってほしい」と期待する。静岡ではウエディングドレスを着たくても着られなかった女性たちの夢をかなえようと、結婚式場の協力でドレスや場所を借りて、希望者が無償着用できるイベントも開いた。「赤ちゃん先生」は23都道府県で展開し、兵庫県川西市では市内の全公立小中学校で取り入れられるなど行政とも連携。昨年には広島県の女子少年院でも実施されるなど広がりを見せている。

 昨年秋に京都校が立ち上がったばかりだ。現在7人の講師が活動している。京都校代表の磯恵さん(36)=西京区=は「実績のある独自のプログラムを生かしながら、多世代の交流につなげたい」と意気込む。

 京都は、町衆が創設した番組小学校に代表されるように伝統的に地域のつながりが強い。地域と連携し、赤ちゃん先生などを契機により幅広い社会問題に取り組むことをNPOは目標にしている。

 現状では、地域活動の担い手は、リタイア世代の男性が中心となっている。社会から切り離され、孤立しがちな育児中の女性たちが社会と接点を持つ機会として、こうした場がもっと広がる社会になってほしいと取材を通じて実感した。