菅義偉首相が、所信表明演説で2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにすると表明した。

 日本は温暖化対策で遅れをとってきたが、ようやく欧州連合(EU)などの目標と足並みをそろえた形だ。

 だが、出遅れ感は否めず、達成に向けては、二酸化炭素(CO2)排出が多い石炭火力発電の扱いや再生可能エネルギーの拡大など、乗り越えなければならない多くのハードルがある。

 脱炭素実現に向けた政府の覚悟と実行力が問われよう。

 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の実現には、50年までに世界全体の温室ガス排出を、森林が吸収する分などを差し引いてゼロにする必要がある。

 EUなどはそれに沿った目標を掲げてきたが、日本政府は実質的にゼロにする明確な時期を示さず、「50年に80%削減」という消極的な姿勢に終始してきた。

 だが、EUなど100カ国以上が「50年実質ゼロ」を目指し、中国も9月、「60年に実質ゼロ」を宣言した。加えて、米大統領選で温暖化対策に力を入れる民主党の政権になれば、日本が孤立する恐れも出てくる。

 これ以上、脱炭素への意思表示を先延ばしできなくなったというのが、政府の本音ではないか。

 問題は、目標に向けた具体的な道筋をどう描くかだ。

 政府は3月、通過点となる30年度の温室効果ガスの排出削減目標を13年度比で26%減に据え置いたが、専門家からは「50%削減が必要」との指摘が出ている。

 11年の東京電力福島第1原発事故以降、排出が多い火力発電への依存は高まっている。18年度の電源構成の実績は火力77%、再生可能エネルギー17%、原発6%だ。

 当面必要なのは、今月から始まった中長期の「エネルギー基本計画」の見直しを機に、脱石炭火力や再生エネ比率の大幅引き上げといった方向性を30年の電源構成目標で明確にすることだろう。

 国が再生エネの拡大目標を明確に示さなければ、産業界も大規模洋上風力などへの本格的投資に踏み切れない。

 一方で首相は石炭火力の穴を原発で埋める考えをにおわせているが、事故リスクや巨額の安全対策費などを思えば、脱原発は不可避である。

 脱炭素に向けては、蓄電池や水素技術といったイノベーションも加速させる必要がある。官民での取り組み強化が求められよう。