問わず語りに、ただ話す。聞く人も質問や指摘を差し挟まない。キャッチボール型の会話とはひと味違うコミュニケーションをアルコール依存症の自助グループの人たちは大切にしている▼京都府断酒平安会が各地の支部ごとに毎週開く例会。生活や健康が乱れ人間関係も損なった苦しい体験を依存症の人が率直に語り、飲酒したい気持ちを抑え続ける▼つらいエピソードが時折、皆の笑いを誘う。「ああ、私も経験した」「あの頃を越えて今がある」。そんな思いが込み上げ、仲間の存在や希望を共感できるのだという▼アルコール依存症は病気との自覚がなかなか持てず、治療を受けるまで長い時間がかかる。本人も家族も孤立し、心身ともに傷つくことが多い。厚生労働省は2013年調査で、治療が必要な人を約109万人と推計したが、実際に受けているのは8万人にとどまる▼平安会に1月、家族の会「みやび」が発足した。「家族が笑顔になろう」を合言葉に交流を図る。酒の害は、身近な人を真っ先に巻き込む。治療や回復への歩みを本人に促せるのも身近な人だ▼「自分は違う」「自分でやめられる」と思い苦しむ依存症の人は多い。1人では無力でも、周りの人との信頼を紡ぎ直す中で、笑顔を取り戻す。病に限らず、大切にしたい関係性だ。