異論に耳を傾けない政権の姿勢が、ますます浮き彫りになったのではないか。

 菅義偉内閣発足後、初めての本格的な国会論戦が始まった。菅氏は、日本学術会議の任命拒否を巡る野党からの追及を「個々人の任命理由は答えを差し控える」とかわし続けている。

 きのうの参院本会議の代表質問でも、「任命は法に沿って行った」「推薦通りに任命する義務はない」と従来の発言を繰り返した。任命の判断を変更するかについては「考えていない」と突っぱねた。

 自らの判断を説明しようとする姿勢に欠け、不誠実と言わざるを得ない。多くの国民が抱いている疑念にしっかり向き合うべきだ。

 拒否理由の説明は避ける一方、追及をはぐらかすかのような答弁もあった。学術会議の推薦者の中から6人を任命しなかったのは誰の判断か、との質問に対し、会員の出身や大学に偏りがあるとして「多様性が大事だということを念頭に、私が判断した」と述べた。

 菅氏は、会議側が推薦した105人の名簿を詳しく見ていないと自ら述べている。明らかに矛盾している。きのうの答弁では、最終決裁までに推薦状況の説明を受け、担当の内閣府と自身の考えを共有していたと釈明したが、それで自分が判断したと言えるのか、疑問だ。

 学術会議の「多様性」を持ち出したのも無理がある。菅氏が任命を拒否した6人の中には他に在籍会員がいない大学の教授も含まれている。論点をずらすため、判断理由を後付けしたかのようだ。

 そもそも、日本学術会議法は会員の選考基準について「優れた研究または実績がある科学者」と定めている。偏りを理由にするのは法の趣旨から逸脱しているのではないか。

 同法が定める首相の会員任命権については、1983年に中曽根康弘首相(当時)が「形式的」と国会で答弁している。2004年時点でも「首相が任命を拒否することは想定されていない」との内部文書を政府がまとめていた。

 それが18年に「推薦通り任命すべき義務があるとまではいえない」と、国会での議論がないまま行政府の一存で見解を変えた。

 政府・自民党は、学術会議の体質が問題の根幹として組織の見直しを急ぐが、6人拒否の理由を示すのが先だ。答えようとしない菅氏の姿勢が不信感を高めている。

 今後の国会審議の場で丁寧に説明すべきだ。