国産ジェット機への期待が大きかっただけに残念だ。

 三菱重工業は、開発を進めていた国産初のジェット旅客機スペースジェットの事業化を凍結した。きのう公表した中期経営計画で、「いったん立ち止まる」として開発費や人員を大幅に削減する方針を打ち出した。

 巨額の開発費を投じた国産機復活は「離陸」できないまま失速した形だ。凍結が長引けば撤退となる可能性もある。技術、販売競争が激しい航空機市場に食い込むのは想像以上にハードルが高かったと言えよう。

 スペースジェットは、座席数70~90程度の小型機。プロペラ機YS11以来、約半世紀ぶりの日本での旅客機開発で、2008年に事業化が決まった。空気抵抗を抑えた機体設計と最新鋭エンジンの燃費性能が強みとされていた。

 ところが、設計変更を繰り返すなど開発が難航。納期を6度も延期して信頼を損ね、450機近くあった受注はキャンセルが相次いだ。初号機納入も当初予定の13年度から21年度以降に遅れていた。

 そこへ新型コロナウイルス感染症が直撃した。航空機の需要回復が見通せなくなり、米国での飛行試験も中断を余儀なくされた。

 相次ぐ納期繰り延べで売り上げが見込めない中、開発費は当初の1500億円程度から1兆円規模に達し、重い負担に。利益を生まない国産機事業への株主の風当たりが強まったのもやむを得まい。

 厳格な安全性が求められる航空機の開発には、部品の製造や品質管理に高い信頼性が欠かせない。だが自前の開発にこだわったのが裏目に出たとも言える。技術力を過信し、開発の見通しに甘さはなかったか。いま一度謙虚に点検すべきだろう。

 将来の需要回復に備え、国の安全認証「型式証明」の取得は目指す方針という。先行きが不透明な中、認証取得は「いばらの道」となろうが、国産機開発の技術を途絶えさせないでほしい。

 国産機の復活は「ものづくり」再生を託す国策の意味合いもあり、開発に約500億円の公費が投じられた。凍結決定は国の産業政策にも打撃となろう。日本の技術力に対する国際的な評価を下げる恐れがあり、国は産業競争力を高める戦略を練り直す必要がある。

 約100万点の部品で製造する航空機は裾野が広く、数多くの中小企業が部品を供給している。展開次第では雇用面を中心に地域経済へも悪影響が出る。きめ細かな目配りが欠かせない。