10月26日 トースト、ぽん
 トーストはフライパンで焼くわが家。とてもおいしいのですが、一方で私はポップアップ式電気トースターに憧れているのです。焼けたらぽんっと飛び出すあれ。昭和の家庭の必需品の一つです。今なお人気で、家電売り場にはノスタルジックなデザインの各種が並ぶ。子どもの頃はマーガリンとジャムで何枚も食べたもの。あなたの好みは何枚切り? 「六つ切りの一切り半は八切りの二切りと同じ 朝食はパン」(大森正道)

10月27日 コーヒーミル
 朝はミルで豆をひくのが最初の作業。コーヒーとの付き合いは長く、小学生から。と言ってもコーヒー牛乳にコーヒーガム…。粉を溶かし甘くして飲むものと思い込んでいた少年が、数十年後、温度は酸味は煎(い)り方は…とうるさいおじさんに。今は手動ミルに憧れつつも時間の余裕なく電動なのがやや悔しい。しかも家庭用製品は、ひきむらの多いのが難。何台も商品テストのように試し、模索する日々です。それも楽しきかな。

10月28日 ぜいたくなコップ
 夕食時、家族そろって「いただきまーす」のときに口にする1杯のビール。この瞬間のために朝昼頑張っておりまんねん、と言っても過言ではない私の大切なビアグラスはクリスタル製。鳥獣人物戯画の絵が描かれたバカラ、友人がくれた手頃な大きさの「ぜいたくなコップ」です。液と泡を7対3に慎重についで、くいっ。この口あたりのよさよ。5客あるので、コロナの自粛が解けて、仲間が遊びに来る日が待ち遠しい。

10月29日 鬼おろし
 「暮しの手帖」の取材で鬼おろしの魅力を教えてくれたのは料理家の渡辺有子さん。メニューは「鬼おろしわさびそば」。ダイコンもニンジンもキュウリもこれでおろす。生野菜のざくざくの食感に感動しました。鬼の歯のようなギザギザの形状からこの名前に。頑丈な竹製のおろし器、今では自宅の必須の道具となっています。これからの季節、鍋物の薬味作りにいかがでしょう。使用時は、ごつい歯にかまれぬようご注意を。

10月30日 せいろ賛
 中華料理あれこれの中で「おいしいなあ」「楽しいね」と感じるのは、大中小のせいろで出てくる熱々の蒸し物です。せっかちで親切な店員はすぐふたを取ろうとしがち。わぁまだ取らないで、なんてやりとりも面白がりつつ味わう、にぎやかで華やかな点心が好き。わが家でも活躍するのが、中華街で買った大ぶりのせいろです。寒い季節は毎朝これで旬の野菜その他を蒸して、毎回違うオイルやお酢、香辛料で楽しんでいます。

10月31日 ピーラー
 ピーラーという料理器具は昔生家にはなく、初めて出合ったときには感動しました。ジャガイモはもちろん、アスパラ、キュウリ、ゴボウ…しゃっしゃっとリズミカルに。便利で楽しい道具です。斜めに切るとよりスムーズ(ということで初めから斜めにしている製品も)。脇の穴は芽取り。刃の向かう先に指を持ってこないこと。料理家の土井善晴さんの「慣れない男子がキャンプで張り切って指を切る道具」という言に笑いました。

11月1日     マイマグ
 マグカップは昔はさほど一般的ではなかったように思います。今はほとんどの方にマイカップがあるのでは? 暮しの手帖編集部でも、花森安治の絵のカップからスヌーピーや妖怪・一反もめん(これは私)まで、おのおののカップが個性を示していて愉快でした。いわゆるキャラものと親和性があり、自由度が高い。コーヒー、紅茶、ほうじ茶なんかも…いつでもそばにいる友達のような食器。あなたのはどんな?

 

~ほんしきのあさごはん~

 

<文 澤田康彦 絵・題字 小池アミイゴ>

 イギリスの絵本「パンやのくまさん」(福音館書店)のくまは、パン屋さんです(当たり前)。朝とても早く起きて、かまどに火を入れ「あさいちばんのおちゃをのみます」。この一文がよい。手にはマイカップ。

 ぼくもそうです。早寝して早起きした朝、湯を沸かし、家人が起き出すのを待ちつつ、入れる紅茶は早摘みダージリンなどの軽め。このときのマグカップは、アルゼンチンの国旗のデザイン。水色ストライプにおちょぼ口の太陽の図案が好きで、ずっと前のワールドカップの年に街で見つけました。あのお日様は「五月の太陽」。インカ帝国発祥だそう。

 さてくまさんは、それからパン生地を作る。膨らむまで寝かしておいて…そこからの一節がまたよい。「こんどは ほんしきにあさごはんを たべます」。絵を見ると、卓上にはイギリス式山型パン、コーンフレーク、薄紫の布はポットカバーかな。ティーカップは、目玉焼きを乗せたお皿とおそろいである。

 本式の朝ご飯! 引かれる言葉です。

 うちの朝。ぎりぎりで起き出してきた子どもたちとともに大騒ぎの時間と化す。まずは顔を洗わせ、ご飯を食べさせ、妻は弁当を作り、ぼくは大急ぎで車で子どもを駅や学校まで送り届ける…という毎日(コロナ禍のため春から送り迎えが続いているのです)。

 帰宅してからが夫婦の「ほんしきのあさごはん」。時間の流れ方がゆるやかなものに戻る。毎朝のことなので2人はほぼ無言で作業をこなす。コーヒー豆をひき、丁寧に入れる。せいろの温野菜、トーストはフライパンで焼くとか。FMラジオが流れ、ビートルズなんかがかかると「お!」。それくらいしか発語しないなあ。それぞれ新聞を読んだり、読みかけの本を開いたり。本式かどうかは怪しいけど、静かで大事な時間であることは確かです。ちなみにこのときの妻のマグカップはムーミン。ぼくのは1面コラムでも書いた一反もめん。もめんのくせに太っているという点が気に入っています。

 ところで、くまさんシリーズはほかに「うえきや」「ゆうびんや」等々がある、実直な職人もの。このプロのくまたちを手本としつつ、ぼくの午前は原稿書き。この拙文なんかも朝の時間に生まれたものです。

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澤田康彦 さわだ・やすひこ 1957年生まれ。編集者・エッセイスト
小池アミイゴ こいけ・あみいご 1962年生まれ。イラストレーター