小中学校の児童生徒に1人1台のコンピューター端末を配備する文部科学省の「GIGA(ギガ)スクール構想」が、前倒しで進められている。

 当初は、2023年度までの実現を目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたオンライン授業にも備えるため、端末配備の目標を20年度内とした。

 構想を受け、全国の教育委員会や学校現場は、タブレット型端末などの機種の選定や発注、さらに実際に端末を使った授業や家庭学習の検討作業に追われている。

 教育の現場にもデジタル化の波が押し寄せている形だが、ハードの整備だけでは不十分だ。機器を生かした教育の中身こそが問われよう。

 文科省は、構想について「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、個別最適化され創造性を育む学びに寄与する」とうたう。

 ただ、その理念の実現には課題も多い。

 日本の教育はICT(情報通信技術)化の遅れが指摘されてきた。経済協力開発機構(OECD)の18年の調査では、生徒がICTを活用していると答えた中学教員の割合は平均51・8%だったのに対し、日本は17・9%にすぎず、参加48カ国中で47番目だった。

 コンピューターの扱いに不慣れな教員が、「見切り発車」の感もある急な端末の配備に対応できるだろうか。

 授業などでの端末の活用法は、各自治体や学校に任されている。民間企業を中心に教材の開発も進んでいるが、実際の授業を通じてノウハウを積み重ねていく必要がある。モデル事例の提示や教員研修の充実など適切な支援も求められる。

 学校外での活用にも留意すべきだ。

 コロナ感染再燃で再び休校した際のオンライン学習も視野に、端末を普段から家庭に持ち帰ることが検討されている。

 児童生徒が、各自でインターネットを利用する場面も想定される。有害なページの閲覧については学校側で一定の制限を設定することも可能だが、すべてを規制することは難しいとみられる。

 インターネット上の掲示板や会員制交流サイト(SNS)への書き込みによるトラブル、いじめも増えている。

 ネット利用におけるモラル教育の充実にも力を入れる必要がある。

 今回の構想に当たっては、端末購入の補助費などとして、国は20年度の補正予算に約2300億円を計上した。だが、今後の予算措置について明確な言及はない。

 端末やソフトは頻繁な更新が必要で、メンテナンスなどの維持費もかかる。家庭内の通信環境には差があるため、通信用のモバイルルーターなども別途購入し、必要に応じて貸し出す対応を検討している自治体もある。

 ICT教育の充実にはコストがかかる。行政による適切な財政措置がなければ、各家庭の重い負担になりかねない。政府は、教育の機会均等の保障にも十分な配慮をすべきだ。