市民の選択は今回も「大阪都構想」にノーだった。

 大阪市を廃止して4特別区を設置する構想の賛否を問う住民投票はきのう、2015年に続いて僅差で否決となった。

 都市としての一体性を失い、政令指定都市としての権限を縮小させる構想に対し、市民の拒否感が根強かったといえる。

 4特別区の設置が市民生活に具体的にどんな影響を及ぼすか最後まで見えにくかった。なぜ都構想が必要かの説明も十分ではなかった。

 都構想を看板政策に掲げてきた松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事や大阪維新の会にとって、住民投票で2度の敗北は大きな痛手となろう。

 世間の耳目を集める制度改革よりも、住民生活の現状に寄り添った地道な行政こそ首長に求められる-。市民はそんなシンプルな原理を両首長に突きつけたのではないか。

 住民投票で否定された以上、都構想実現を織り込んで進めてきた都市行政の方向性は根本から見直す必要が生じよう。

 25年の大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)なども、住民目線で検討し直すべきではないか。

 都構想は、府と市の「二重行政」解消を目指すことなどを最大の目的として掲げた。

 しかし、都道府県並みの権限を持つ政令指定都市をなくすことで、市民サービスが停滞するのではないかとの懸念はくすぶり続けた。現在は全市域で利用できる保育所が特別区になっても維持されるか、福祉施策やごみ収集などの運営が円滑に行われるかなど、生活レベルの疑問も解けないままだった。

 現在の大阪市が持つ財源の一部が府に移管され、引き継ぐ業務に応じて府と特別区に再配分されるなど、大阪市民には不利益にも見える仕組みであることも不安をかき立てたといえる。

 こうした疑問に、松井市長らは丁寧に答えていただろうか。説明会の回数も前回に比べて少なく、一方的なメリットばかりが強調されたとの批判も出た。

 コロナ禍の中で住民投票の実施に踏み切ったことも問われよう。コロナ対応で人気を得た吉村知事への支持が高いうちに勝負に出たとの見方もある。

 市民への説明を尽くすことよりも党の都合を優先させたとすれば、市民をないがしろにしたことになる。

 15年の住民投票でいったん否決された都構想は、維新が2度にわたる知事・市長ダブル選の勝利でよみがえらせた経緯がある。選挙で勝ったことで政治的な正当性を得られたとの思い込みが、今回の住民投票では通用しなかったということだろう。

 ただ、都構想を巡る議論は、都道府県と政令指定都市が抱える問題をクローズアップさせた面がある。知事と市長がそれぞれ持つ権限を大都市行政の中でいかに折り合わせていくかは、引き続き重要なテーマである。

 否決されたが、都構想の賛成票とは拮抗(きっこう)した。現在の市行政の在り方に不満を持つ市民が少なくないことを物語る。

 今回の結果を、都市の将来像を考え直す機会にしてほしい。