元五輪選手の腸内から見つかった新種のビフィズス菌「AuB-001」

元五輪選手の腸内から見つかった新種のビフィズス菌「AuB-001」

■京セラには臭いを測るセンシング技術がある

 ―京セラやサンガと協業し、共同研究を始めました。

 「京セラは便などの臭いを測るセンシング技術があり、健康経営も進めている。一方でサンガは育成組織の選手が寮生活で栄養バランスのとれた食事が管理され、面白いデータが得られる可能性が高い。進めたいのは食とITなどの技術が融合した『フードテック』と、ヘルスケアサービス。フードテックには技術が欠かせず、京セラと協業できることは大きな価値だ」

 ―フードテックで何を目指しますか。

 「生活の中に入っていく。健康増進や体調管理だけでなく、最終的な目標は社会のコンディショニングだ。例えばまちづくり。街のスタジアムの周辺で、エンターテインメント感覚で利用できるデータを提供したり。その実現には腸内細菌の研究だけでは駄目で、いろんなデータを掛け合わせないといけない」

 ―来年で40歳を迎えます。これからのキャリアプランは。

 「次の10年には社会が大きく変わり、フードテックなどを活用するスマートシティーも現実になっているはず。重要なのは、会社がいかに世の中に貢献できているかだ。私がいなくても会社が正しい道を進むのであれば、もう一度サッカー界に戻りたい」

 ―クラブ経営に参画するのですか。

 「それが一番の関心事。選手育成ではなくまずはスポーツの文化やチームの価値を高め、産業のパイを広げたい。経済だけではない。プロスポーツの最大の魅力は感情の揺れ動きだ。僕は5万人の観客の前でプレーする怖さも喜びも知っているし、熱狂的なサポーターに随分鍛えられた。自分の財産をどう還元できるか考えたい」

■次の展開を考えることは成長につながる

 ―新型コロナウイルスの影響で多くの競技大会が中止され、中高生や大学生が涙をのみました。

 「夢の舞台が目の前から無くなるのはとてもつらい。納得するまで時間がかかるかもしれないが、僕はまず現状を受け入れてみて、『次に何をするか』と自分にいつも問い掛ける。悔しいし悩むけれど、次の展開を考えることはすごく成長につながる」

 「僕は不整脈で現役を続けられなくなった。とても悩んだが、最後はしょうがないと考えた。もしサッカーが全てだったら、人生はそこで終わり。僕が初めてゴールを決めた時、母が手をたたいて喜んでくれた。サッカーを続けた原点はそこにある。つまりサッカー選手は手段であり、目的は人を喜ばせること。嘆いてばかりいても状況は変わらない。だから行動してほしい」

 すずき・けいた 1981年、静岡市生まれ。東海大翔洋高卒業後、2000年に浦和レッドダイヤモンズ入団。06年にオシム監督率いる日本サッカーA代表デビュー。15年10月にアスリートの腸を研究するAuB(オーブ、東京)設立。16年1月に現役引退し、代表取締役に就任。AuBは今年9月、元五輪選手の腸内から新種のビフィズス菌を見つけたと発表した。

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