医療費抑制に向けた公的病院の再編問題を巡り、全国知事会など地方3団体は、新型コロナウイルス対策を優先し、期限を設けずに議論を進めるべきだとの考えを政府に伝えた。

 厚生労働省は昨年、再編や統合の検討が必要とした公立・公的病院の名称を公表し、地域で協議の上、今年9月までに結論を出すよう求めていた。

 全国の自治体や医療機関は、いまだ収束の兆しが見えないコロナ感染の対応に日々追われている。8カ月ぶりの国との会合に出席した後、知事会で社会保障を担当する平井伸治鳥取県知事は「(再編・統合の)スケジュールを凍結するべきだ」と述べている。猶予を求める地方側の声への配慮が必要だろう。

 厚労省が再編・統合の検討の必要性を指摘した約440の病院リストのうち53施設は、国や自治体が認定する感染症指定医療機関だ。感染防護の態勢が整っているため、これらの多くはコロナ感染者の治療で中心的な役割を担っているとみられる。

 病院リストの公表に当たっては、がんや救急、心疾患、小児、周産期医療など国が重視する9分野における診療実績と競合施設が近隣にあるかどうかの立地だけが分析された。感染症指定医療機関かどうかについては考慮されていなかったとされる。

 コロナ禍では、医療の現場から「病院でのコロナ感染患者の受け入れは、ベッドやスタッフに余裕がないとできない」との声が多く聞かれた。流行の再燃に備える観点からも、病院の再編・統合については慎重に検討すべきだ。

 新たな感染症への対策を含めて、地域にとって必要な医療体制をいま一度点検し直してほしい。

 団塊の世代の全員が75歳以上となり、医療や介護の需要が大幅に高まる「2025年問題」に加え、40年代には高齢者人口のピークも迎える。社会保障費の増大や人材育成の課題への対応もにらみ、長期的な視点から、地域医療の質を維持する対策が必要だ。

 厚労省による病院リストの公表は、強引な手法だとの大きな批判を招いた。名指しされた病院の地元住民からも不安の声が上がっている。

 政府には、地方での医師の確保や広域的な医療ネットワークの構築などでの支援が求められている。病院の統廃合ありきではなく、地域の実情を踏まえた議論が望まれる。