第三者が提供した卵子や精子で生まれた子どもの親子関係を明確にするため、超党派の議員が、今国会に民法の特例法案の提出を目指している。

 現行の民法は、夫婦以外が受精に関わる生殖補助医療での出産を想定しておらず、親子関係を巡って訴訟に発展するケースも出ている。

 生まれた子どもや子を望む夫婦らの実態に即した法整備が急がれる一方、生殖補助医療への国民的な理解が深まっているとは言い難い。幅広い議論と合意形成が必要だ。

 国内では、無精子症などで男性不妊に悩む夫婦を対象に、1948年から夫以外の精子の提供を受けて行う人工授精が行われており、これまでに1万人以上が生まれたとされる。

 卵子提供も2007年からの13年間に83件行われている。卵子提供を受けるため、海外渡航している例も多いとみられている。

 旧厚生省の専門委員会は00年に親子関係に関する法整備を条件に第三者が介在する生殖補助医療を容認する報告書を作成している。だが、法制化は進まず、明確なルールがないまま既成事実化が進んできた。

 今回、超党派議員が提出を目指している法案は、卵子提供では産んだ女性を母親とし、精子提供では夫を父親とする方向という。法制化されれば、第三者からの卵子や精子の提供が法的に認められることになる。不妊に悩む夫婦らにとっては一つの望みとなろう。

 ただ、卵子提供や代理出産には家族関係が複雑になるといった根強い批判がある。

 生まれた子どもが遺伝上の親の情報を得る「出自を知る権利」の必要性も広く認識されている。厚生労働省の生殖医療部会も03年の報告書で法制化の際には認めるよう求めているが、法案は「2年をめどに検討し、法的措置を講ずる」とするにとどめている。

 懸念や課題を先送りした形で、十分に議論が尽くされたようには思えない。

 近年は、独身女性や、性的マイノリティーのカップルが子どもを望み、精子の提供を受けて出産する動きが広がっている。

 インターネットなどを介して個人間で精子の売買が行われている実態もあり、トラブルも報告されている。

 安易な生命の取引が野放図に広がるのは好ましくない。法的に不安定な立場に子どもが置かれていることを放置すべきではない。