総務省が同省の有識者会議にNHKの受信料の支払い義務化を検討するよう提案した。

 同じ会議でNHKは、テレビを持っていてもいなくても届け出を義務づけるべきだと要望した。

 NHKによる「説明書」には受信契約を結んでいない世帯について、居住者の名前や転居先を公共機関や公益事業者に照会できる制度案も盛り込まれている。

 国、NHKがともに受信料の徴収に強制力を持たせる制度を作るべき、という考えを明確にした形だ。

 現行の受信契約と受信料の支払いは、視聴者とNHKの一定の信頼関係の上に成り立っている。

 受信料徴収が強制になれば、長い間に築かれた両者の関係を転換することになる。

 番組作りなども含め、公共放送としてのNHKの在り方にも影響が出よう。幅広い理解を得られるとは思えない。慎重な検討が必要だ。

 放送法はテレビなどの受信機器を設置した人にNHKとの受信契約を義務づけているが、支払い義務は明記していない。罰則規定もない。

 総務省やNHKは、テレビを持っているのにNHKと契約していない人がいることを従来から問題視してきた。総務省は今回、受信料支払いを不当に免れた人にNHKが割増金を科すことも認めるなど、強制性を前面に出した。

 NHKもテレビ設置の有無の確認や受信料支払いの要請などの訪問営業に年間約300億円かかっていることを強調し、「公平負担」と「訪問によらない営業活動」の必要性を訴えた。

 世界には公共放送の受信料を支払いが義務化されている国もあり、国やNHKはそうした事例を念頭に置いているようだ。

 だがそうした国では公共放送と民間放送の役割が明確に区別されている。

 一方、NHKは民放と視聴率競争をしている。近年では民放と見まがうような番組作りも増えている。そのうえ、NHKの資金調達がこれまで以上に強化されれば、民放からは民業圧迫との声が強まろう。

 NHKに対しては、時の政権に対し毅然(きぜん)と向き合っていない、という批判が根強くある。

 かんぽ生命の不正を巡る報道に日本郵政の幹部が介入した問題については、いまだ十分な説明が果たされていない。

 いま求められるのは、公共放送として自律した姿を視聴者に示すことだろう。

 気になるのは、NHKが居住者情報を照会する機関として、自治体や電力やガス会社などの公益事業者を想定していることだ。

 自分の個人情報がNHKにも提供されることに同意する人はどれだけいるだろう。昨今の個人情報保護を重視する流れとの整合性も保てない。

 テレビの非所有世帯に届け出させるのも現実的ではない。有識者会議ではNHK案への批判が相次いだ。国民に新たな心理的負担を強いるような方法が現実的とは思えない。