木造牛頭天王像 木津川市指定文化財 平安時代後期 木津川市松尾神社蔵

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 京都府立山城郷土資料館(木津川市)では考古、民俗、歴史それぞれ専門の学芸員3人が順に秋の特別展を担当する。今秋、民俗担当の横出洋二さんが企画した「京都スタイル―民具で巡る多文化京都」は、館の特色が伝わる展示となった。

 展示、研究対象とする京都府の文化は多様だ。織物一つ取っても、全国的に知られる西陣織や友禅染だけでなく、丹後の裂き織り、刺し子、藤織り、丹波の木綿地に糸縞(しま)や地絹を使った着物、南山城の相楽(さがなか)木綿と幅広い。特別展では、農具、漁具など幅広い生活用具を紹介し、この多様性を見せる。

木津浜図絵馬(復元レプリカ) 原品は木津川市御霊神社所蔵で木津川市指定文化財、京都府暫定登録文化財 文政11(1828)年

 横出さんは山城と、丹後郷土資料館(宮津市)の2館で30年以上勤めており、各地域が独自の気候風土や文化を持つ京都府の個性を肌で感じるという。その感覚と長年の経験が、多彩な暮らしを民具で浮かび上がらせる今回の特別展に結実した。

 特別展は、歴史や文化を掘り起こす機会でもある。学芸員が関連資料を調査する過程で、多くの発見がある。特別展はゴールではなく、新たな活動の出発点になることも多い。

 歴史担当の伊藤太さんが2007年に手がけた「南山城の俳諧」展では、当地の俳諧作者たちの発句に与謝蕪村が自筆で評価を加えた「点帖(てんじょう)」など新資料を多数紹介し、南山城の俳諧研究が大きく進み始めた。

 明治から昭和にかけて相楽村で作られていた相楽木綿は戦時の物資不足で衰退したが、04年の特別展でその魅力が見直され、「復活させたい」と願う人たちが「相楽木綿の会」を発足、伝承活動を行っている。

相楽木綿の会が制作した、華やかな相楽木綿の着物。特別展に展示中

 さらに、館では勾玉(まがたま)作りや火おこしなど体験講座も活発に行い、参加した子どもが教員になり、教え子を連れてくることもある。「教科書に出てくる銅鐸(どうたく)や和同開珎を自分で作ることは一生の経験になる」と考古担当の細川康晴さんは言う。

 「博物館は本物に触れ、何かを感じる場所。コロナ禍で逆にそれを強く感じた」と3人は口をそろえる。8月に久しぶりに開いた親子対象の講座は定員の3~4倍の申し込みがあった。誰もが本物を求めている。そして、本物に触れて心動かされた人が、次の誰かに楽しみを伝える。地域のミュージアムはその拠点だ。

 

 京都府立山城郷土資料館 常設展では南山城の文化財を展示。江戸時代、川港として栄えた木津浜の様子を描いた御霊神社(木津川市)の絵馬(展示は複製)は、多様な舟や人馬の往来、対岸風景などで木津川水運の活況を伝える。同市松尾神社に伝わる木造牛頭(ごず)天王像は、疫病よけの神を表現した平安期の貴重な作例。向日市森本遺跡出土の人面土器(弥生時代)や城陽市の古墳から出土した装身具など考古の展示も面白い。特別展「京都スタイル―民具で巡る多文化京都」は12月6日まで。木津川市山城町上狛千両岩。0774(86)5199。