超低金利時代の負の側面が老後の暮らしに影を落とす現実が浮き彫りになってきた。

 第一生命保険が、企業から預かる年金資産の運用で約束する予定利率を19年ぶりに引き下げると発表した。

 来年10月に現行年1・25%を0・25%に見直す。

 生保各社は、運用環境の厳しさに苦しんでおり、追随する動きが広がりそうだ。

 全国の企業、従業員の双方に負担増や年金減額の形でしわ寄せが及ぶ恐れがある。預貯金を含め、個人の生活資金に関わる超低金利の影響を点検し直す必要がある。

 企業年金は公的年金である国民年金(基礎年金)、厚生年金に上乗せする「3階」部分に当たる。

 今回の引き下げ対象は、将来の給付額を保証している「確定給付型」だ。制度を設けた企業は、資金の4分の1程度を生保の企業年金保険で運用している。業界全体に広がれば、国内1万2500社、従業員940万人に影響が及びかねない問題だ。

 世界的な金融緩和が背景にある。日銀が2016年にマイナス金利政策を導入し、生保が主な運用先としてきた日本国債の10年債利回りは0%近辺で推移。欧州や米国でも1%を割り込んでいる。

 生保各社は高い予定利率に頭を痛めつつ、競争関係のため横並びを維持してきたが、我慢の限界に達したということだろう。

 企業側は運用や制度の見直しを迫られるが、容易ではない。

 取り得る選択肢のうち、年金給付の減額は労使交渉が欠かせず、従業員の反発が必至だ。とはいえ、給付額を維持した上で掛け金を追加するのは、企業の財務悪化につながるためハードルが高い。

 近年増えている「確定拠出型」へ移行が進む可能性がある。運用実績で年金額が増減するが、企業に新たな持ち出しは発生しない。

 個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を含め、国も個人運用や私的年金の制度拡充を進めている。だが、投資商品は元本割れリスクを伴う。

 超低金利下で、ゆうちょ銀行は今年4月、定期性貯金の金利を引き下げ、銀行預金も追随した。個人財産への影響は広がっている。

 企業年金目減りへの不安は、土台の公的年金制度が十分でないからだ。国が昨年行った年金財政検証で、約30年後の給付額の価値は現在より2割近く減るとされた。

 「自助」で賄いきれない老後生活の安心をどう再構築するか、腰を据えた議論が求められよう。