ウーバーイーツの配達パートナーが料理を運ぶため使用しているリュック。京都市内でも配達エリアが拡大している(京都市中京区・京都市役所前)

ウーバーイーツの配達パートナーが料理を運ぶため使用しているリュック。京都市内でも配達エリアが拡大している(京都市中京区・京都市役所前)

 米配車大手ウーバー・テクノロジーズが手掛ける料理配達サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」が、東京や京都、福岡など国内各地の都市部に広がっている。料理を配達するのは、個人事業主として働く「配達パートナー」と呼ばれる人たちだ。インターネットを介して個人をつなぐ「シェアリングエコノミー」という仕組みで、時間や場所に縛られない新しい働き方としても注目を集める。一方で、配達パートナーはウーバーと直接的な雇用関係にないため、交通事故にあった時の医療費は自己負担で、休業補償もない。実際に事故の当事者となった配達パートナーは「自由度が高い分、負っているリスクも大きい」と話す。ウーバーイーツの現状を探った。

■2016年に日本上陸、全国11都市に拡大

 スマートフォンのアプリで注文した料理が自宅やオフィスに届くウーバーイーツは、国内では2016年9月に東京都で始まった。ウーバーは専用アプリを提供し、料理を注文するユーザーと、飲食店、あらかじめ登録された配達パートナーをつなぐ。飲食店から配達を引き受けた配達パートナーには、ウーバーが一定の手数料を差し引いた金額が報酬として支払われる。19年2月時点で東京都のほか、横浜市、京都市、神戸市、福岡市など全国11都市に広がっている。

 京都市では18年7月からサービスが始まった。当初の配達エリアは上京区、中京区、下京区など中心部に限られていたが、現在は北区や左京区、右京区などにも広がり、市内全11区のうち8区をカバーする。配達料は220~380円で、レストランやカフェ、ファストフードなど約300店が登録している。

■サービス拡大も、交通事故のリスク大きく

 ウーバーイーツのサービスが全国に拡大する裏側で、配達パートナーが巻き込まれる交通事故も発生している。ウーバーは事故件数を公表していないが、京都市内でも配達パートナーによる交通事故が起きている。

 2月上旬に自転車で配達中に転倒事故を起こし、鎖骨を折る重傷を負った男性(37)は「医療費はすべて自己負担。けがが治るまで配達の仕事はできないし、休業補償もなく収入が途絶えてしまった」と話す。ウーバーのアプリには、注文したユーザーと飲食店が配達パートナーを「良い」「悪い」で評価する仕組みがある。「配達が遅いと感じたユーザーに『悪い』評価をされたくないと、焦る気持ちがあったかもしれない」と振り返る。

 「自転車1台と健康な体があれば、好きな時に稼げる」。男性は、以前に勤めていた飲食店を辞めた後、1月からウーバーイーツの配達パートナーとして働き始めた。1日平均約20件の配達をこなし、70キロ以上の距離を自転車で移動することもある「肉体労働」。受け取った報酬は多いときで1日約1万2千円、少ない時は4千円ほどで「一日中走り回っても、時給に換算すると最低賃金を下回ることもあった」。今回の事故でレントゲンやCTスキャンなど検査代もかさんだ上、今後に手術も予定しているといい「治療費はすでに5万円近くかかってしまった。個人事業主として扱われるので、ウーバーからの補償はない。実際に事故を起こしてリスクの大きさが骨身に染みた」と肩を落とす。

■ウーバーの自転車保険、配達パートナーは補償せず

 ウーバーによると、自転車の配達パートナーに対し、配達中に発生した交通事故に限って、相手方の損害を1事故あたり上限1億円まで補償する対人・対物賠償保険を同社でかけている。ただし、配達先からの帰りや注文を待っている時などは、ウーバーが加入している保険の対象外という。また、個人事業主として飲食店から配達業務を請け負っているという形態のため、配達中の事故であっても配達パートナーに労災保険は適用されない。ウーバーは飲食店と配達パートナーの仲介にとどまる。ウーバーの担当者は「警察とも連携し、ヘルメットの着用や交通事故防止を配達パートナーに呼びかけている」と説明する。

 日本労働弁護団常任幹事の川上資人弁護士(東京弁護士会)は「時間や場所に縛られない柔軟な働き方は魅力的に映るかもしれないが、労災保険がないことをはじめ、働く人に対する保証が何もない状態に等しい」と指摘する。川上弁護士によると、フランスでは16年8月に法律を改正し、ウーバーのようにアプリで仕事の仲介を行う企業に対して、直接的な雇用関係がなくても労災保険や職業訓練の費用負担、団体交渉に応じることなどを定めているという。

 川上弁護士は「シェアリングエコノミーの実態は、仲介する企業が手数料を徴収して利益を上げる一方で、企業の社会的責任を果さず、リスクを個人に押し付けている。日本でも今後、トラブルが増えてくるのではないか」と話している。