性的少数者の4人に1人が、性的指向や性自認を本人の許可なく暴露する行為「アウティング」の被害にあっている。

 そんな実態が、10代から70代の当事者1万人余りを対象にした民間の意識調査でわかった。

 カミングアウト(告白)していない当事者がアウティングされれば、相手に悪意がなくても、生活の崩壊や自死に追い込まれることがある。

 アウティングをどうすればなくせるか。社会全体で考えなければならない問題だ。

 調査で目を引くのは、アルバイトなどを含む働く人の約8割が「職場や学校で、性的少数者に対する差別的な発言を聞いた」と答えていることだ。

 そうした言動が、暴露されることへの当事者の恐怖心を増幅させている。

 アウティングには、学校で担任に打ち明けたら保護者や他の教員に勝手に伝えられた▽相談した上司から同僚に広まった▽人事書類で戸籍上の性別を知った同僚に暴露された-などさまざまなケースがある。

 2015年に一橋大法科大学院の男子学生が同性愛であることを同級生に暴露された後、転落死した。これを機に、同大学のある東京都国立市が18年、アウティングを禁止する条例を全国で初めて施行した。

 三重県も本年度中に禁止条例を制定する方針だ。国立市と同様、罰則規定は設けないが、性の在り方に理解を求め、差別や偏見のない社会の実現に努力することを県民の責務として明記する。

 共同通信が7月に実施した全都道府県調査では、三重県以外に禁止条例制定の動きはなく、京都府や滋賀県は既存の人権関連の条例や指針で対応可能としている。

 だが、アウティングの危険性を広く知ってもらい、差別や偏見を容認しない姿勢を示すためには、条例での明文化が有効ではないか。

 アウティングを巡っては、性的指向などを打ち明けられた人が、その重みに耐えられず周囲に話してしまうこともある。

 専門家によれば、打ち明けた本人に対し、誰にどこまで話したかを確かめるとともに、誰にどこまで話していいかも聞くことが重要だという。

 被害を防ぐためには、専門知識を持つ相談員を配置した窓口の整備を進める必要もあろう。

 6月に施行された女性活躍・ハラスメント規制法の指針は、アウティングもパワハラと規定し、大企業に防止対策を義務づけたが、対象は職場に限られている。

 性的少数者が孤立に追い込まれない社会にしていくためには、地域、職場、学校、家庭などを含む包括的な対策を考える必要があるだろう。

 日本は同性婚を認めていないが、自治体が同性カップルらを「パートナーシップ」として公認する制度が広がりを見せるなど、性的少数者への理解は徐々に進んできている。

 それでも欧米などに比べるとまだまだ不十分だ。多様な性と生き方を認め合う社会を目指したい。