香港の高度な自治を認める「一国二制度」が危機的状況に陥った。

 中国の国会に当たる全国人民代表大会の常務委員会は、香港立法会の議員資格を剝奪する基準を決定した。これをもとに、香港政府が民主派議員4人の資格を取り消すと宣言した。

 剝奪基準では、香港の独立の宣伝や外国勢力への干渉要求を具体的な行動として挙げている。

 民主派を排除したい中国共産党とその意を受けた香港政府が一体となり、立法府に直接介入したことになる。

 香港の反政府活動の取り締まりを目的とする国家安全維持法(国安法)が6月に施行された。その後、香港政府は中国に批判的なメディア関係者や活動家を逮捕し、昨年来の抗議活動をさまざまな容疑で摘発するなど民主派への弾圧を強めてきた。

 中国当局も、デモ参加者への処罰が軽く、暴力を容認しているなどとして司法の在り方を批判し続けている。

 立法会議員の資格剝奪は、国安法をてこに香港での三権分立を否定し、行政府主導での統治を強める意志を中国側が明確に示した形だ。

 立法会議員で残る民主派15人全員は、政府への抗議のために辞表を提出した。

 民主派全員が辞職すると立法会の構成は、ほぼ親中派一色となる。議員の身分をなげうって国際社会の中国への圧力や市民の支援を求めたとしても、その後の展望は開けていない。

 資格を取り消された議員が声を絞り出して話したように、香港の「この先の道はとてつもなく厳しい」と予想される。

 立法会では、香港政府や中国の意のままに重要法案や予算の審議が進む恐れがある。来年9月に実施される予定の立法会選挙についても、民意をくみ取る仕組みを保てるのか危惧される。

 中国の習近平指導部は、今回の議員資格剝奪を、米国大統領選直後という政治空白を狙って行ったとの見方がある。

 中国側は内政問題であるとして、これまでも多くの国際的な批判を突っぱねてきた。だが、強権を振りかざして民主主義や自由を踏みにじる行為は大国の振る舞いとして認められない。

 中国自身が世界に約束した香港返還時の「一国二制度」の形骸化は、一段と鮮明になった。国際社会は協調して対応を強める必要がある。