来年夏に延期された東京五輪・パラリンピックについて、政府は海外からの観客受け入れを前提に準備を進める方針を確認した。

 受け入れる場合、新型コロナウイルス対策で通常求めている14日間の自主待機措置を免除する。公共交通機関での移動も認める方向という。

 コロナ禍でも世界から観客を招いて大会を開く意欲を示した形だ。しかし、足元では感染が再拡大している。受け入れの可否は来春に最終判断するというが、状況がさらに深刻化している恐れもある。

 五輪・パラには、選手や観客の安全を確保した上での開催が可能なのかと懸念する声が根強い。あらゆる事態を想定し、備えていく必要がある。

 自主待機の免除は、感染状況が安定した国・地域からの入国者を対象に想定している。それ以外の観客は、待機を求めるなど適切な防疫措置を取るという。

 観戦時の感染防止に向けては、マスク着用や大声での会話禁止などを盛り込む観客向けガイドラインを定め、悪質な違反者には入場拒否などの措置を講じるとする。政府の規制に準じ、観客数の上限も設定する方針だ。

 ただ、国内外の現状は海外から観戦客を受け入れられる状況には程遠い。

 政府は五輪・パラ開催を見据えて、定員の50%としているプロスポーツなど大規模イベントの人数制限を12月から緩和する方針だった。だが、感染拡大が顕著になってきたため、来年2月末まで先送りした。どのような感染対策を講じて各競技を運営するかも、定まっていない。

 対策が求められるのは、競技会場やホテルだけではない。観戦客の行動範囲や移動手段を制限することは難しく、国内の観光地や繁華街に出掛けることも想定される。入国後に感染が広がれば、自治体の検査や医療体制を逼迫(ひっぱく)させる恐れもある。

 国際オリンピック委員会のバッハ会長は「海外からの観客がいるのが前提」と述べ、無観客での開催を否定している。

 政府にも、新型コロナで疲弊した経済の回復に向け五輪を訪日観光客受け入れの契機にしたいとの思惑が透けるが、受け入れありきでは感染対策がおそろかになりかねない。

 国民の不安を払拭(ふっしょく)し、理解を得られるかどうかが肝心だ。安全な大会に向けての議論を積み上げなければならない。