国内総生産(GDP)と人口で世界の約3割を占める自由貿易圏が誕生する。

 日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に合意し、協定に署名した。

 関税の削減や統一的なルールによって自由貿易を推進する枠組みだ。各国の批准手続きを経て発効すれば、アジアに巨大経済圏が築かれることになる。

 欧米などで台頭する保護主義への対抗軸として、大きな影響力を持ち得るだろう。

 RCEPは日本にとって貿易額1、3位の中国、韓国を含む初の経済連携協定(EPA)となる。環太平洋連携協定(TPP)や日米貿易協定、欧州連合(EU)とのEPAに続き、ほぼ全世界で自由貿易の足場を得る意義がある。

 政府が掲げるのが、自動車部品はじめ工業製品の輸出拡大だ。各国の関税を段階的に下げて撤廃品目を91・5%とし、協定のなかった中国向けは8%から86%、韓国は19%から92%へ大幅拡大する。

 投資ルールも中国が受け入れる協定で初めて、国が進出企業に技術移転を要求することを禁じた。

 中韓とASEANにまたがる日本企業のサプライチェーン(部品の調達・供給網)の効率化や、投資活動の後押しが期待されよう。

 ただ、関税撤廃率はほぼ全品目のTPPに及ばず、輸入の農林水産品は49~61%に抑えて長い移行期間も設けた、米、麦など重要5項目は削減・撤廃対象外とした。

 輸入品価格の低下など消費者の恩恵は限られるが、国内生産者への影響を各国が考慮したという。経済の発展状況や政治体制も異なる国々を包括するため、より緩やかな枠組みとしての発足を優先させた判断といえる。

 だが、交渉国のうちインドは参加を見送った。貿易赤字が膨らみ国内産業保護に傾いたという。

 日本はインド加盟を強く求めてきた。RCEPをてこに経済、軍事両面で影響力の拡大を図る中国へのけん制役を期待したが、思惑は崩れた。

 米中対立の下、中国は米国主導の包囲網突破に向け、自由貿易の擁護を掲げてルール作りの主導権を狙う。一方、米国のバイデン次期政権は、民主党内に反対の根強いTPPなどへの早期復帰は容易でないという。

 今回の協定に設けたインド復帰への特別措置を含め、経済連携の枠組みや公正、互恵のルールの強化へ、日本がより積極的な役割を果たしていく必要があろう。