子育て支援の充実につながる見直し案と言えるのだろうか。

 中学生以下の子どもを対象とする児童手当について、政府が、共働きで高所得の世帯を中心に減額する方向で検討しているという。

 年収を判断する基準を、現行の「世帯主」から「夫婦の合計」に変更するため、高所得と判定されて手当が減る世帯が多く出ると予想される。

 手当減額で浮いた金額を待機児童解消の費用に充てるとみられるが、子育て関連予算を単に付け替えるだけのように見える。

 菅義偉首相は以前から待機児童問題に「終止符を打つ」としてきたが、その見返りに子育て世代の負担を増やすのは本末転倒だ。

 子育て支援の予算全体を底上げするのが政治の責任ではないか。その姿勢なくして、看板に掲げる全世代型社会保障の充実は達成できまい。

 児童手当は、中学卒業までの子ども1人につき月額1万~1万5千円を支給する。高所得世帯は月額5千円の特例給付を受け取る。

 見直し案では、年12万~36万円も減額される世帯が出る可能性があるとも試算されている。

 第3子以降には手当の増額も検討されるが、子ども60万人分に影響が出るとみられている。

 家計の負担能力を世帯主の年収だけでみる現行制度の見直しは時代の流れといえる。特例給付の在り方も、所得再配分の観点から議論する余地がある。

 ただ、今回の見直し案は、財源確保が主眼になっている印象だ。

 一連の見直しで約500億円が捻出できるというが、コロナ対策を大量の国債発行で賄う巨額の予算に比べ、小粒な感は否めない。本気で子育て支援しようとしているのかも怪しくなる。

 安倍晋三前政権は消費税引き上げの増収分を、所得制限を設けない幼児教育・保育の一部無償化に転用した。その際に保護者らからは「待機児童問題の解消を優先すべき」の声が上がった。

 なお深刻な待機児童を解消するため、今度は児童手当を見直すというなら、政府の子育て支援策がいかに一貫性を欠いているかを示すようなものだ。

 菅首相は不妊治療支援や男性育休の取得促進など分かりやすい個別のテーマには熱心だが、子育て政策全体を総合的、体系的にとらえる発想に欠けていないか。

 財源論や負担増の議論だけでなく、長期的な視点で子育て支援策をとらえ直してほしい。