宇宙開発に民間の力を生かす大きな転換点になりそうだ。

 米国の宇宙企業スペースXが開発した新型宇宙船クルードラゴンが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野口聡一飛行士ら4人を乗せて打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)への初の運用飛行に成功した。

 米国は2011年のスペースシャトル退役後、ISSへの人の輸送をロシアのソユーズ宇宙船に頼る状態が続いていたが、9年ぶりに宇宙飛行を自国の手に取り戻したことになる。

 スペースXは民間活用を進める米航空宇宙局(NASA)が採用した2社の一つで、独自のロケットと輸送機で実績を重ねてきた。

 従来使い捨てだったロケットの1段目を軟着陸させて再利用を可能にするなど費用の大幅な削減を実現しており、民間ならではのコスト感覚が生きたといえよう。

 宇宙での復権を狙う米国は、国際協力で月を周回する新基地を建設して24年に月面着陸を目指す「アルテミス計画」を推進し、30年代には火星探査をもくろむ。

 宇宙飛行のコスト低減は、そうした構想を後押しするだけでなく、宇宙旅行などの商業化にも弾みをつけそうだ。

 日本もアルテミス計画への参加を既に決めており、政府は来年から新たな宇宙飛行士の募集を始める予定だ。日本人が月面に立つ日も遠くないかもしれない。

 日本はこれまで、ISSに7人の飛行士を滞在させ、実験棟の建設などに貢献してきた。小惑星探査やISSへの物資輸送でも、日本の宇宙技術は高い評価を受けている。

 今回の新型宇宙船に米国人以外で野口さんが唯一選ばれたのも、そんな信頼と期待の表れだろう。

 ただ、アルテミス計画への参加を含め、宇宙探査には巨額の費用が見込まれる。目的や費用対効果で国民的理解を得る必要がある。

 宇宙産業への民間参入は日本でも進み、低コストのロケットや超軽量の探査機を開発するベンチャー企業などが育っている。

 宇宙への夢を広げるなら、日本も民間の活力が欠かせない。そのためにも、米国に頼るだけでなく、日本独自の宇宙開発ビジョンをより明確に打ち出すべきではないか。

 宇宙開発を巡っては、中国が昨年、世界で初めて月の裏側に無人機を着陸させるなど存在感を高めている。利害対立を超えた国際協調をどう進めるかも大きなテーマになる。