京都市のマッチング制度で成立第1号となった京町家。日本文化の体験型観光施設として活用される予定という(中京区)

京都市のマッチング制度で成立第1号となった京町家。日本文化の体験型観光施設として活用される予定という(中京区)

 京町家の減少に歯止めをかける京都市の「京町家保全継承条例」が制定され、今月で3年となった。市が保全対象に指定する京町家は初期の約400軒から約6千軒にまで増えた一方、取り壊しを検討する所有者と活用を希望する事業者を結ぶマッチング制度の利用は進まず、ようやく今秋に第1号の案件が成立した。市は条例に基づいて事前に解体届が出された京町家80軒のその後を把握しておらず、条例の効果は不透明だ。

■所有者への通知に課題

 年800軒、1日2軒のペースで取り壊されている―。そんな結果が明らかになった2016年度の京町家実態調査を受け、市は17年11月に同条例を制定した。18年5月には、市が個別または地区別に指定する京町家を解体する際、1年前までに届け出るよう所有者に義務化。未指定の京町家にも努力義務を課し、届け出があった京町家をマッチング制度に誘導する仕組みを整えた。

 義務化対象の京町家は、市が審議会での審議を経た上で指定する。条例制定以降、市は指定の網を広げており、10月末時点で個別指定は958軒、地区指定は12カ所までに増加した。個別・地区を合わせると約6千軒の京町家に、解体時の事前届け出が義務付けられている計算になる。

 しかし、指定の根拠には曖昧な面がある。個別指定する「重要京町家」の場合、判断基準には格子や通り庇(ひさし)といった外観に加え、通り庭や火袋などの内観も含まれているが、実際には所有者の許可を得て内部を確認するのが難しく、外観から判断するケースが多い。

 事前届け出をせずに解体するなど条例に違反した場合は5万円の過料が課せられるが、指定にあたり所有者の同意は求められていない。指定の前後2回、郵送で通知が届くのみといい、所有者への周知にも課題がある。

 市によると、今年11月までに解体届が出されたのは81軒(うち指定は33軒)。しかしマッチング制度の利用に至ったのはわずか6軒だった。今秋には中京区の京町家で初めてマッチングが成立したが、残る80軒は、解体されたのか、残存しているのかも不明という。市まち再生・創造推進室は「解体の動きを事前につかみ、くい止めるのが条例の狙い。その後を追いかけることはない」とする。

 NPO法人「京町家再生研究会」の小島富佐江理事長は「仕組みはできても運用がうまくできておらず、検証すべき。京町家の重要性や条例の意図を丁寧に時間をかけて説明し、市民や事業者の意識を底上げする必要がある」と指摘する。

≪京町家≫
 京町家保全継承条例では、1950年の建築基準法施行以前に建築された木造建築物で、通り庭や火袋、格子などの伝統的な構造や形態、意匠を有するものと定義している。2016年度実態調査によると、残存軒数は約4万軒で、前回の08~09年度調査から約5600軒が滅失。また空き家状態の京町家の割合は14・5%で、前回から4ポイント上昇した。次回調査について、市は「未定」としている。