「クモの魅力を知ってほしい」と話す中田さん(京都市東山区・京都女子大)

「クモの魅力を知ってほしい」と話す中田さん(京都市東山区・京都女子大)

アズチグモ。網を張らずに花の上などでエサをまちぶせる(中田教授提供)

アズチグモ。網を張らずに花の上などでエサをまちぶせる(中田教授提供)

網にとまる秋の女王ジョロウグモ

網にとまる秋の女王ジョロウグモ

 クモは自分で張った網の糸を食べてリサイクルし、子どもは糸を使って空を飛ぶ。クモの知られざる生態を紹介する「クモのイト」を、京都女子大教授で動物行動学が専門の中田兼介さん(51)が出版した。「面白い生きものなのに嫌われがち。賢さと行動の複雑さが魅力のクモに興味を持ってもらえれば」と話す。
 京都大大学院で博士号を取得後、大学でアリの研究を続けていた中田さんがクモに魅了されたのは20代の終わり。大学の植物園を散歩中、美しい網の真ん中に座った小さなクモを目にしたのがきっかけだった。
 調べてみると、クモの世界は驚きに満ちていた。待ち伏せして獲物を得るため、入念に準備し、消耗を抑えながら備える。網はほこりや乾燥で劣化するため毎日張り替えるが、多くのクモがタンパク質の網の糸を自ら食べてリサイクルする。エサをたくさん捕まえた翌日は、前日よりも大きな網を張る。子育て中に母親の寿命が尽きかけると、自分の体を栄養として役立ててもらうため、子グモの前に身を投げ出す。子グモたちは競争を避けるため、腹から糸を出して、たこのように風に乗り、いろんな場所に散らばっていく。
 「驚くことばかりで、興味は尽きません」。クモは現在4万8千種類ほどが確認されているが、未発見を含めると12万種と推測する研究もあり、未知なる部分が圧倒的に多いという。
 本には、生殖前にメスに食べられないように求愛するオスの作戦、網の張る手順、クモの糸を使って服を作ろうとする人間の野望など、クモにまつわる盛りだくさんのエピソードが紹介されている。
 中田さんは、反響を呼んだ「図解 なんかへんな生きもの」の監修も務めた。「クモが生きていく上での論理を紹介していますが、どの生きものにもそれぞれの倫理がある。人間とは違う視点で世界を見るきっかけになればうれしい」と話す。1980円、ミシマ社刊。