「中秋の名月」に照らされた丹波霧。午前3時前から発生し始め、ゆっくりと亀岡の灯を覆い隠していった(2020年10月2日午前4時48分、京都府亀岡市曽我部町・かめおか霧のテラス)

「中秋の名月」に照らされた丹波霧。午前3時前から発生し始め、ゆっくりと亀岡の灯を覆い隠していった(2020年10月2日午前4時48分、京都府亀岡市曽我部町・かめおか霧のテラス)

 秋の夜長、月光に照らされた白いもやが、綿あめのようにかさを増し、京都府亀岡市の灯を隠していく。夜が明けると、街は深い霧の中だ。秋から冬の亀岡盆地は、連日「丹波霧」に覆われる。一方、同じく盆地の京都市内は、めったに霧が出ない。この差は何だろうか。

 霧は、よく晴れて風が弱く、湿度が高い夜に発生しやすい。気温が下がると空気中の水蒸気が微小な水滴となり空中を漂う。気象用語では見通しが1キロ未満を「霧」と呼ぶ。

 10月~11月の京都府南部は、1年で最も雲が少ない。亀岡盆地は四方を山に囲まれて風が弱く、晴れた夜は放射冷却現象が発生して冷え込みやすい。霧が出る条件がそろっている。

 西日本高速道路によると、霧による速度規制は2015~19年の5年間、亀岡盆地の京都縦貫道(亀岡IC-丹波IC)で52回あった。一方、京都盆地の名神高速(京都東IC-大山崎JCT)は、霧の速度規制は6回だけだ。

 京都盆地も朝は冷え込む。亀岡盆地と同じように、晩秋から冬の降水量が少なく晴天が多い。つまり両盆地は「双子のような気候」といえる。なぜ、京都に霧は出ないのか。

 実は、京都盆地も1960年代までは年30回以上、霧が発生していた。しかし、70年代以降に激減。原因は、都市化による「湿度の低下」と「気温の上昇」と考えられるという。

 京都地方気象台によると、都市化で水田や山林がコンクリートなどになり、植物の蒸散が減って空気中の水蒸気が減った。京都市の年平均相対湿度は、60年代まで70%以上だったが、近年は60%台だ。さらにエアコンの排熱なども加わり、夜の気温が下がりにくくなった。

 このため、京都盆地は放射冷却現象が起こっても、空気中の水蒸気が少ない上、「水滴」になるまでは気温が下がらず、霧が出にくくなったという。

 街の発展とともに、幻想的な光景を失った京都。21世紀に入ってから霧が出たのはわずか4回だ。

 一方、田園風景を残す亀岡市は、霧を観光に生かしている。盆地を見下ろす標高約400メートルの山上に「かめおか霧のテラス」を設置、霧の日は広大な雲海を望める。

 ちなみに、雲海の撮影は、高気圧に覆われ「晴れ」の予報で、京都市の気温が前日より10度以上冷え込む早朝が狙い目だ。