児童虐待防止法の施行から20年がたった。

 保護者による暴力や養育放棄などを虐待と定義し、被害防止に向けた社会の責務を明記した同法は、家庭内のこととされがちだった問題への認識を変える契機になった。

 全国の児童相談所が児童虐待として対応した件数は1990年度の統計開始以来、右肩上がりが続いている。社会の関心の高まりが数を押し上げている面もあるが、法施行後も幼い命が失われる事件は後を絶たない。

 対応が求められる事案の増加に現場が追いついていないといった課題が顕在化している。被害防止や支援の実効性を高める体制の整備を急がなければならない。

 厚生労働省によると、2019年度の児相の虐待対応件数(速報値)は19万3780件に上った。防止法施行前年の1999年度は1万1631件で、20年で17倍に増えている。

 虐待の形態で最も多いのが、子どもの前で親が配偶者に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」を含む心理的虐待だ。10万件超と、全体の半数以上を占めている。

 面前DVは2004年の法改正で虐待の定義に加えられた。同年の改正では虐待の疑いがある場合も児相などへの通告が義務付けられ、08年には子どもの安全確認のために家庭に強制立ち入りできるようにするなど、児相の権限も強化された。

 今年4月の改正では、児相と配偶者暴力相談支援センターとの連携強化が明記された。それぞれの役割や支援内容を踏まえ、虐待とDVの両面から危険の芽を摘む必要がある。

 法改正を重ね、虐待の兆候をつかみ、事態の悪化を防ぐ仕組みは整えられてきた。だが、それに見合う体制拡充が進んでいるとは言い難い。業務量の増大で児相の負荷は高まっている。

 政府は17年度時点で3240人だった児相の児童福祉司を22年度までに約2千人増員する計画で、本年度中に4600人になる見通しという。ただ、対応件数は計画時から大きく増えている。今の増員計画で十分か、検討が必要だろう。

 対応に当たるスタッフの専門性を高めていくことも欠かせない。昨年の時点でも勤務経験が5年未満の児童福祉司が6割を占めている。人員の拡充で、経験が浅い人の割合がさらに高くなるのは避けられない。

 経験豊富な退職者を再雇用して若い世代にノウハウを伝えてもらうほか、支援実績のある民間団体との協力を広げていくなどの工夫が求められよう。

 児童虐待を巡っては、幼少期や10代のころに暴力などを受けた大人への支援が不足していると指摘されている。

 子どもは親による加害を打ち明けにくく、受けていた行為が大人になって虐待だったと気付くケースもある。心の傷を抱える当事者を長期にわたって支える仕組みづくりが急がれる。

 子育てや生活への不安を抱える家庭を必要な支援に結びつけるには、周囲の気付きも重要だ。いま一度、社会全体で子どもを守るとの認識を高めたい。