自転車で琵琶湖を一周するビワイチに挑む人々の姿が、この秋も湖岸を彩っている。

 日本を代表する「ナショナルサイクルルート」の第1弾に、滋賀県のビワイチと茨城県のつくば霞ケ浦りんりんロード、広島・愛媛県のしまなみ海道サイクリングロードが国に認定されて1年がたった。新型コロナウイルス禍に負けない野外レジャーとしても注目度が高まっている。

 自転車・バイク愛好者から口コミで広まったビワイチ(総延長193キロ)は、ここ20年ほどで人気が定着した。市民に見いだされ、育てられたルートともいえる。

 一方で、安全で快適に巡るための走行空間の整備や案内表示はこれまで十分でなく、不幸な事故も起きている。滋賀県警によると、ルート上で自転車が絡んだ交通事故は2015~19年に計約150件。中には、路肩の約5センチの段差にハンドルを取られて転倒負傷したサイクリストに対し、県が損害賠償したケースもあった。

 県は、走行位置の表示と道案内を兼ねた青い矢羽根形のラインを路面に引いたり、ビワイチのロゴマークを描いたりして視認性を高め、サイクリストとドライバーの双方に注意喚起する取り組みを進めている。

 確かに湖岸沿いでこれらを目にすることは増えたものの、表示の意味が広く知られているとは言いがたい。自転車専用レーンと誤解されるケースもあるようだ。路面の修繕や点検強化と併せ、行政には表示の周知へ一層力を入れてもらいたい。

 昨年は推定10万9千人がビワイチを体験した。15年の5万2千人から増加が続く。ナショナルルート認定を受けて県は、湖岸を走り抜けるだけでなく途中で内陸部に寄り道する「ビワイチ・プラス」を提案している。

 内陸の観光地を訪れる人が増えればルート上の混雑と走行速度が緩和され、けがやトラブルを防ぐ効果が期待できる。地域経済にも恩恵があるだろう。

 ただ、そのためには地元に詳しい案内役が欠かせない。とりわけナショナルルートに求められるのは、外国人にも対応できるガイドである。

 レンタル自転車の拠点や休憩施設などハード整備に比べ、ツアーガイドら人材の養成はまだまだだ。交通ルール・マナーを含む基本情報の多言語化、体力や目的に応じた多様なコース提案、緊急時のサポート態勢、鉄道など公共交通機関との連携もさらに進める必要がある。

 ビワイチの魅力をさらに高めるために、何をどうプラスするのか。官民の幅広い協働が問われるところだ。

 訪れる人に青く穏やかな水面をみせる琵琶湖も、その下では異変が起きている。琵琶湖の深呼吸と呼ばれる水理現象「全層循環」が2年続けて確認されず、湖底の生物に影響が出ている。原因は気候変動だ。

 二酸化炭素を出さないクリーンな乗り物で湖岸を巡りながら、地球環境について考えを巡らせる。ただ楽しいだけでない、そんな湖国ならではの体験も付け加えたい。