井上さんが倒れた現場。近くに誘導員が配置されていた偶然や、関係者の迅速な対応が功を奏した(長岡京市河陽が丘)

井上さんが倒れた現場。近くに誘導員が配置されていた偶然や、関係者の迅速な対応が功を奏した(長岡京市河陽が丘)

 京都府長岡京市内で行われたランニングの大会中に、参加した男性が心肺停止になったが、重なった偶然や迅速な措置で一命を取り留めた。主催者は、来年1月の大会で新たな救護対策を予定しており、男性は「異変を感じたら途中でやめる勇気も持って」と愛好家に呼び掛けている。

 市スポーツ協会が、西山公園体育館(長法寺)周辺で今年1月に開催した「長岡京ガラシャロードレース」。井上美治さん(73)=京都市右京区=は、スタート直後の坂を越えた付近で違和感を覚えた。何度も走ったコースだったがいつもより苦しい。「ペースを落とそう」。そう思った瞬間に意識を失った。急性心筋梗塞だった。

 偶然にも沿道誘導員が近くに立っていた。駆け寄ると心音が確認できない。心臓マッサージを始め、通報を受けた協会職員が自動体外式除細動器(AED)で電気ショックを行った。通りかかったランナーの男性(39)=同市金ケ原=も足を止める。「交代します」と、心肺蘇生を始めた。消防士だった。直後、井上さんが反応した。

 救急車で運ばれている最中に意識が戻り、病院で治療を受けた。発症から3、4分で心臓が再び動き出したとみられ、現在も後遺症はない。消防士の男性は「傷病者を見つけた時は、周囲にいる人に助けを求め、複数で対応することが重要。役割分担して冷静に行動できる」と指摘する。

 井上さんは毎朝5キロは走り、フルマラソンもこなしていた。血圧を下げる薬を飲んでいたが、不調を感じていなかっただけに、「命拾いした。助けてもらった人に感謝の気持ちでいっぱい」と頭を下げる。ゴールの爽快感や完走証もらう楽しみのために、大会は無理をしたくなりがちといい、「ちょっとした異変や不調があれば、勇気を持ってリタイアする大切さを痛感した」と振り返った。