京都市の南部、宇治市と久御山町に接する向島地域は、かつて日本最大級の遊水池だった巨椋池の干拓地として知られる。来年で、入居開始から40年を迎える向島ニュータウンには、外国人や障害者を含め子どもから高齢者まで約1万3千人が入居する。多彩な人々が、豊かな自然の中でともに暮らしている。(今野麦)

 毎月第3土曜の昼、地域のコミュニティースペース「京都文教マイタウン向島(MJ)」には、子どもたちのにぎやかな声が響く。食事の提供を通して子どもの居場所をつくる「キッズキッチン」。MJを運営する京都文教大と、民生委員らが2014年に始めた。
 8月27日のメニューは、そうめんとサラダ。子どもたちは慣れない手つきで包丁を握り、付け合わせのキュウリや錦糸卵を刻んだ。民生委員の高木春美さん(74)さんは「しんどい子どもたちが、頼れる場でありたい」と願う。MJでは他にも、小中学生の学習支援や高齢者の将棋クラブなど日々住民たちが集っている。

 

 向島には外国人も多い。向島学生センターには、中国や韓国、タイなど30カ国200世帯の学生や研究者らとその家族が滞在している。最近では、入居する外国人が地域との関わりを求め、さまざまなイベントを開く。
 地域住民を講師に招いた着付けやいけばな、陶芸などの日本文化教室が人気だ。今春に中国から来日した吴雪娜さん(27)は「いろいろな国の人がいて、文化を学ぶのは勉強になる」。同じく楊熙さん(29)も「向島は自然が多くて気持ちいい。秋の紅葉が楽しみ」と心待ちにする。
 宇治川と木津川、桂川の3河川が合流する地域にあった巨椋池。1933年からの干拓事業後に整備されたニュータウン周辺には、現在も広大な田園と緑豊かな風景が広がる。
 近鉄向島駅から直線道路に沿って約600メートル続く向島中央公園は、住民たちの憩いの場。季節ごとに70種類以上の木々が茂り、管理する同公園愛護協会のメンバーが定期的に清掃している。

 

 その一人、小林勝さん(77)は自身が暮らす棟の花壇の管理も市から引き受け、雑草で文字を作っている。「今日も元気で」「思いやり」「防災」。「草を字の形にするのは手間が掛かるが、住民に『元気をもらう』と言われて続けています」
 ニュータウンの中心にある愛隣館は、身体や知的障害者らの支援を長年続けている。向島ニュータウンには車いす専用住宅が54戸あり、入居者の支援が出発点となった。
 現在はデイサービスや事業所に約30人が通い、食事やレクリエーション、作業をともに行う。平田義所長は「ニュータウンはまさに多文化共生のまち。いろんな人がいて当たり前、という豊かで優しい地域を目指したい」と話す。