星野佳路さん

星野佳路さん

 新型コロナウイルスの世界的流行で、インバウンド(訪日外国人)がほぼいなくなった日本の観光地。一変した環境の中で、新たな観光モデルとして注目を集めるのが近距離旅行の「マイクロツーリズム」だ。提唱する星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表に11月中旬、コロナ時代の観光について聞いた。

 ―マイクロツーリズムが浸透した理由は。

 「実は昔から観光事業者も観光客も経験していたからだ。私が継いだ当時の軽井沢の旅館も東京から人が来るのは7、8月だけ。その時期以外は近郊からの誘客に努めていた。客にとっても隣の県の温泉地に車で行くというのが昔よくあった旅行だった。これが新幹線、格安航空(LCC)など交通網の発達により遠方に安く、速く行けるように変化した。観光業はこぞって遠くの大市場をターゲットにした上、インバウンドも加わり、マイクロツーリズム市場はここ20年縮小していた。それが自家用車で楽しむ安全な旅として復活した形となった」

 ―星野リゾートの経営状況はどう変化したのでしょうか。

 「4、5月は前年比で90%減、6月以降は持ち直した。背景に5月末までの緊急事態宣言の延長がある。消費者側が2回目の延長はないと判断したため、早い段階で夏休み期間の予約が急増した。客の戻りが遅かったのは北海道と沖縄だ。夏に第2波として感染が広まったのと、飛行機で行く必要があることが影響した。その分本州の施設は好調で、星のや京都もマイクロツーリズム圏からの集客に成功した。8、9月の稼働率は前年並みに回復し、消失したインバウンドをカバーする結果となった」

 ―急拡大したインバウンド市場の問題点は。

 「コロナ前からリスクを感じており、インバウンド比率の高い施設には『イエローカード』を出していた。政治的、経済的な問題が発生すると影響を受けやすいからだ。成長市場であることは間違いないが、リスク分散が重要だ。業績が上向くからとインバウンドだけを集客すると、サービスの質も落としてしまいかねない。日本文化の目利き層にもある程度の比率で来てもらい、評価をいただく必要がある」

 ―京都では「オーバーツーリズム(観光公害)」と言われる状況が近年、深刻化していました。どんな解決法があるのでしょう。

 「エコツーリズムの考え方を都市観光に落とし込むことだ。観光資源である自然環境を守るために、観光で得た収益を保全に回すという発想がある。オーバーツーリズムの最大の問題は許容人数を超えた集客により、本来の魅力が劣化して失われてしまうことだ。保全の費用を客に負担してもらうため単価を上げると、客足は鈍化するが魅力は向上する」