生誕100年を迎えた「知の冒険者」梅棹忠夫の著書『知的生産の技術』は半世紀以上も 読み継がれ、今年100刷の大台に乗った。情報氾濫の今、あらためて脚光を浴びる「知の 冒険者」が著書に込めた知的生産の奥義とは何なのか。(THE KYOTO=樺山聡)

 タッチパネルのパソコン画面に指を触れると、無数のカード群がまるで生き物のように動き、立体的なドーナツ状に姿を変えた。

 国立民族学博物館(大阪府吹田市)で12月1日まで開かれている梅棹忠夫の生誕100年記念企画展「知的生産のフロンティア」。会場に置かれた端末では、AI(人工知能)を活用して制作されたソフト「梅棹クルーズ」で、梅棹が生涯をかけて残した膨大な「情報」の大海原を泳ぐような体験ができる。

 「何ごとにも楽しむことを忘れなかったという梅棹さんの精神を引き継いだ、ちょっとした遊び心です」。ソフトの開発に携わった国立情報学研究所の阿辺川武特任准教授は、ドーナツ状に「整列」したカード群を見ながら話した。

■目当ての情報が指1本で


 1400点に及ぶという画面上のカードには、民族学者の梅棹が残したメモやフィールドワークでの写真など、デジタルアーカイブズの情報が載っている。その中から、例えば遊牧民族の写真を1枚選ぶと、撮影日時や場所などの細かいデータとともに表示された。

 「自分で集めて記したあらゆる情報が平等に並び、指1本で取り出せる。これは梅棹先生が夢見た世界と言えるかもしれません」

 企画展の実行委員を務める国立民族学博物館の小長谷有紀客員教授は言う。

 梅棹は自身の「知的生産」の奥義を、1961年に著書『知的生産の技術』(岩波新書)で披露した。

 「インターネット時代の今では当たり前になった『知的生産』という言葉も、生みの親は梅棹だった」

 まだ情報産業時代が到来する前に出されたにも関わらず、同書はロングセラーを続け、梅棹の生誕100年に当たる今年、ついに100刷の大台を迎えた。

 この本は、梅棹が「まえがき」で述べるように、「いわゆるハウ・ツーものではない」。安易な技術の解説書や教科書ではなく、梅棹が自らで悪戦苦闘しながら構築した知的創造の方法論が開陳されている。それこそが、今も古びずに支持されている理由だろう。

 著書『知的生産の技術』で、梅棹が特に重要だと指摘するのが「カード」だ。

 まず、梅棹はレオナルド・ダ・ヴィンチも活用したとされる「発見の手帳」を推奨する。つまり、思わぬ時に突然思い浮かぶ思いつきや発想を記録することの大切さだ。