動物愛護団体が女宅に立ち入った際の室内。汚物やゴミが堆積し、悪臭が漂っていた(6月、京都府八幡市)=神戸ナナプロジェクト提供

動物愛護団体が女宅に立ち入った際の室内。汚物やゴミが堆積し、悪臭が漂っていた(6月、京都府八幡市)=神戸ナナプロジェクト提供

 保護した犬や猫を劣悪な環境で飼育したとして、京都府警は19日に動物愛護法違反容疑で京都府八幡市の動物愛護ボランティアの女を逮捕した。女の自宅では犬や猫が増えすぎて世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」が起きていたとみられる。多頭飼育崩壊は周辺住民の生活環境を悪化させる場合があり、社会問題化している。専門家は国が主導して保護動物の殺処分数を減らした結果、行き場のない犬猫が増えたことが背景にあると指摘する。

■2008年度27万6千匹→2018年度3万8千匹

 「何なの、これ…」。6月3日。八幡市の動物愛護ボランティアの女(54)宅に入った神戸市の動物愛護団体「神戸ナナプロジェクト」代表の女性(36)は絶句した。玄関にはごみや犬猫の汚物が高さ1・5メートルほど積み上がり、異臭が漂う室内からは52匹分の犬猫の死骸が見つかった。一部はミイラ化していた。

 女は約25年間、殺処分を免れるなどした犬猫を関西圏の愛護団体から譲り受け、飼い主を探すボランティア活動をしていたとされる。「病気や高齢でも受け入れることで有名だった。『神様』と呼ばれていた」と女性は語る。

 ただ1年ほど前から女が引き取った犬猫の消息が不明になるケースが相次いだ。犬5匹を預けていた女性は不審に思い容疑者宅に立ち入ったが、結局、3匹は見つからなかったという。女性は「自ら積極的に動物を募っていただけに、悪質で許せない」と憤った。

 一方、動物の虐待問題に詳しい帝京科学大の佐伯潤准教授(獣医学)は、事件の背景として「殺処分を免れた犬猫の受け皿を、ボランティアに頼らざるを得ない問題があるのでは」とみる。

 動物愛護の意識が高まる中、環境省は飼育放棄されるなどした犬猫の殺処分数を減らすことを政策目標に掲げる。各自治体の愛護センターが一時保護や譲渡先の手配を率先して担うようになった結果、2008年度に全国で約27万6千匹だった殺処分数は、18年度には約3万8千匹に減った。

 しかし、佐伯准教授は「受け入れ先が十分に確保されているとは言えない」と懸念する。特に病気や高齢などの犬猫は引き取り手が少ないのが実情だ。やむなく愛護団体が自治体から受け入れたものの、飼い主が見つからずに管理が滞り、多頭飼育崩壊を起こすケースも散見される。

 女性は「ボランティアは殺処分が嫌で動いているけど、手間もお金もかかる。資金難で活動をやめてしまう人も多い」と負担の重さを打ち明ける。

 環境省の調査では、多頭飼育に関して18年度に全国の自治体に寄せられた住民からの苦情は2064件に上った。愛護団体だけでなく、一般の飼い主が経済的理由で去勢手術ができず、ペットが過剰に増えるケースも多い。生活が破綻して、家が「ごみ屋敷」になる飼い主もいるという。

 佐伯准教授は「過剰飼育になっていないか、受け入れ先の状況を調べて定期的に追跡確認するなど、譲渡する側の責任も大きい」と指摘する。その上で「多頭飼育崩壊は、飼い主の生活困窮や健康状態など、複合的な問題をはらんでいる。動物愛護の観点だけではなく、社会福祉の観点から支援していくことも必要だ」と提言する。