国の強制隔離政策による偏見や差別に苦しんだハンセン病元患者の家族に対する補償法が、昨年11月に施行されてから1年になる。

 長く置き去りにされてきた家族の被害回復への道が整ったとはいえ、補償金の申請は伸び悩んでいる。偏見差別を恐れ、二の足を踏む人が多いとみられる。いまだに社会にはびこる差別の根深さが改めて浮き彫りになったと言えよう。

 ハンセン病は感染力が弱いにもかかわらず、国は旧らい予防法によって全患者を隔離対象にした。治療法が確立した後も患者やその家族への差別被害は続き、個人の尊厳を深く傷つけてきた。

 2001年に熊本地裁が隔離政策を違憲と断じ、元患者への補償は進展。家族に対しても遅ればせながら昨年、差別被害への国の責任を認め、賠償を命じた。これを受け、当時の安倍晋三首相が謝罪し、家族補償法が施行された。

 元患者の親や子、配偶者らは申請すれば180万円、きょうだいや孫、めい、おいは130万円を支給される。ところが国が推計する補償対象約2万4千人に対し、今月13日時点で申請受け付けは6431人、認定は5885人と約4分の1にとどまっている。

 何が申請を妨げているのか。新型コロナウイルス感染拡大で手続きに支障が出ている面もあるが、申請自体に対するおびえや迷いがあるようだ。「差別を恐れる状況は、以前と何も変わらない」と語る人もいる。身内に元患者がいることを、近親者にさえ打ち明けられない人は少なくないという。

 国はプライバシー配慮を理由に個別通知はしていないが、請求しやすい環境づくりも必要だ。申請期限は施行から5年に限られる。対象者が漏れなく救済されるよう知恵を絞り、補償の仕組みや手続きを周知する責任がある。

 真の問題解決は、社会に巣くう差別意識をいかに払拭(ふっしょく)できるかが鍵となる。施策が不十分であることは、いまだ差別におびえ、補償申請をためらう人が多いことからも明らかだ。

 私たちは誤った思い込みでハンセン病患者やその家族を排除し、差別を助長してしまった。コロナ禍の今、それと通底する過ちを繰り返していないか。コロナ感染は自己責任であり、感染者は社会にとって危険、迷惑な存在と非難し、排除すべきとの風潮を決して許してはならない。

 ハンセン病問題は、国の責任と併せ、偏見差別を看過してきた私たち一人一人にも強い反省を促していることを肝に銘じたい。