未知の美 広がる喜び

ベニスのグランカナル 1952年

 日本画家堂本印象(1891~1975年)は還暦を超えて初めて渡欧の機会を得た。1952年。半年間でイタリア、ドイツ、フランスなどを回った。途上のスケッチや帰国後の作品も含めた旅の成果を、本画、スケッチ、工芸作品ほか80点近くで振り返る。

ローマの宿の朝 1952年


 多くの画家が憧れ、20代のうちに訪れる人もいたヨーロッパに、印象はなかなか行く機会がなく、その日を渇望していた。「ローマの宿の朝」は、念願かない、プロペラ機で50時間以上かけて行き着いたイタリアの朝食風景。夢に見た時間がこれから始まる! との喜びが画面に満ちている。

サン・ミッシェル 1952年


 寺院や美術館など、1日最低でも10カ所以上を訪れ、画帳を離さない。路上でもすぐスケッチを始める印象を、現地の人々が取り囲んで眺める写真が残っている。路傍の子ども、バーの入り口。目に映る全てが絵になった。

メトロ 1953年
窓 1953年
アルゼリヤの女 1954年
少女 1956年


 画業を確立した上で渡欧した印象は、成熟した人ならではの影響の受け方をしている。帰国後、人間の意識の深みを考えさせるような「メトロ」「窓」などを発表し、四角形や線を使った抽象への模索も始まる。「アルゼリヤの女」「少女」などの工芸作品に見られる装飾的な雰囲気も旅をきっかけに得たものだ。

ピガール(モンマルトル) 1952年


 憧れの地に立ち、未知の美に触れる感動。60歳を超えてなお新たな画境を切り開いた印象のみずみずしい心の震えを感じ取りたい。

 いずれも堂本印象作、堂本印象美術館蔵




【会期】11月28日(土)~2021年3月28日(日) 月曜と12月28日~1月4日、1月12日休館。1月11日は開館
【会場】京都府立堂本印象美術館(京都市北区平野上柳町)
【開館時間】午前9時30分~午後5時(入館は閉館30分前まで)
【入館料】一般510(400)円、高大生400(320)円、小中生200(160)円。かっこ内は20人以上の団体料金。65歳以上は無料(要証明)
【主催】京都府、堂本印象美術館、京都新聞
【問い合わせ】075(463)0007