その見た目から「気持ち悪い」生き物の代名詞とも言えるナメクジを追う女性研究者がいる。全国の外来種を探せ! そんな前例なき「捜査網」に挑む情熱の源に迫る。

■宇高寛子助教・前編


  2018年3月、学術研究のための資金をクラウドファンディング(CF)で募集するサイト「アカデミスト」で、ある風変わりな研究企画が発表された。

 「市民科学の力でナメクジの分布を明らかにする!」というその企画を立ち上げたのが、京都大学大学院理学研究科助教の、宇高寛子氏である。

 「ナメクジはカタツムリの仲間で、大昔に陸生を始めた貝の末裔です。日本には恐らく10〜15種類ほどが生息していると思われますが、これまで詳しく研究されてこなかったため、正確な種の分類もなされていません。このCFは、そうした知られざる日本のナメクジの生態分布の一端を明らかにするために企画しました」(宇高氏)

■GHQ物資とともに外来種


 現在の日本には、もともといる在来種のナメクジに加えて、いくつかの外来種のナメクジが生息している。

 なかでもメジャーな存在なのが、第二次世界戦後にGHQの物資とともに入ってきて日本全国に分布を広げた、体長5〜7センチほどの「チャコウラナメクジ」だ。雨が降ったあとのブロック塀などで私たちが目にするナメクジも、このチャコウラナメクジであることが多い。

 チャコウラナメクジの前には、やはり外来種で明治維新後に入ってきた「キイロコウラナメクジ」という種が全国的に見られていたが、1980年代頃からチャコウラナメクジに生活圏を奪われ、今ではほとんど見ることができなくなっている。