東京五輪・パラリンピックへの視線が、いっそう厳しくなろう。

 大会組織委員会が、来夏への延期に伴う追加経費を約2千億円と試算していることが分かった。

 これとは別に、新型コロナウイルス対策に1千億円程度かかる見通しであることも判明した。

 コロナの世界的な感染は収束の気配がなく、日本では「第3波」に見舞われている。五輪にさらなる巨額支出が必要となることに、国民の理解は得られるだろうか。

 開催そのものを疑問視する声も広がっている。もはや、生半可な説明では五輪実現への幅広い理解を得るのが難しいことを、大会関係者は肝に銘じてほしい。

 追加経費は会場の再確保や設備のレンタルなどの費用、組織委の人件費などが見込まれるという。

 コロナ関連では、検査など医療体制や感染防止に必要な設備の調達などが想定されている。

 昨年12月時点で1兆3500億円に上っていた開催経費は組織委と東京都、国の3者が負担する。

 組織委は10月、会場の仮設経費見直しなどで300億円を圧縮できるとする簡素化策を打ち出したが、埋め合わせるにはほど遠い。

 追加費用とコロナ対策費を3者でどう分担するかが今後の焦点だが、総額が2割増となるだけに財源の確保策が厳しく問われよう。

 コロナ対策では、政府が海外から観客を受け入れる場合に通常求めている14日間の自主待機を免除する方針を示した。だが、来年の感染状況は予断を許さず、どのような対応が要るかは未知数だ。

 五輪実現に向けた準備作業は、無理な想定を重ねているようにも見える。開催と感染拡大防止は本当に両立できるのか、これまで以上に現実的で説得力ある方策を示さなければならない。

 政府の軸足は定まっていない。感染を抑止しながら経済活性化を進めたい菅義偉政権にとって、五輪開催はインバウンド(訪日外国人客)復活の命綱だとされる。

 だが、国内では感染拡大防止を優先すべきとの意見が拡大し、観光支援事業「GoTo」も一部修正を迫られた。場当たり的な姿勢が混乱を招いている。

 先月に来日した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、観客を入れる形で開催を目指す従来の方針を変えなかった。

 コロナ禍で五輪開催の前提は揺らいでいる。膨れあがった経費の問題とともに、何のための五輪なのかを改めて問い直す必要があるのではないか。