「自分みたいに苦しむ人を生み出さないで」と語る男性(大阪市内)

「自分みたいに苦しむ人を生み出さないで」と語る男性(大阪市内)

 詐欺罪に問われ10カ月以上勾留された後、9月に大津地裁で無罪判決を受けた大学4年の男性(22)=大阪府=がこのほど、京都新聞社の取材に応じた。客観証拠がほぼない中、滋賀県警と大津地検が「共犯者」の虚偽供述を別の共犯者に伝えて供述を引き出す強引な手法で、有罪立証に突き進んだ。なぜ、男性はぬれぎぬを着せられたのか。「男性が上位役」と虚偽供述した「共犯者」は2人いた。

 判決などによると、男性の逮捕前の5月、「共犯」の知人が詐欺容疑で県警に逮捕された。知人は調べの途中で「男性から詐欺の仕事を紹介され、報酬をもらった」と供述を変えた。同時期に県警に逮捕されたもう1人の「共犯」の少年も、7月に「男性にアドバイスを受けた」といった内容の供述を始めた。県警は同30日に男性を逮捕した。
 県警や地検は6月、少年に知人の供述内容を詳細に伝えていた。
 少年は当初、17年11月6日や同9日などの犯行計画について「いつも前日に知人と打ち合わせた」と話していた。少年が供述を変遷させたのは、地検が少年に「知人は『11月2日夜に男性宅で、男性も一緒に話し合った』と言っている」などと教えてからだった。

 地検の取り調べは録音・録画されており、証拠提出された。判決は「詳細に教示し、誘導するかのよう」「知人の供述に合わせて虚偽供述した可能性も十分ある」と指摘した。
 また、2日の知人と少年のスマートフォンの通話履歴では飲食店などと頻繁に通話しており、判決は「キャッチ(客引き)のバイトをしていたと推認される」とした。一方、男性の弁護人によると、同日夜に男性は別の友人と遊ぶ動画をSNSに投稿していた。
 しかし、県警と地検は、こうした客観的事実を重視せず、ほぼ2人の証言のみを有力な証拠とした。判決で大西直樹裁判官は「客観証拠の整合性確認が不十分で、供述を詳細に教えるのは不当。捜査手法を検討しなくてはならない」などと苦言を呈した。
 男性の弁護人は「二つしかない供述証拠のうち一つを完全に誘導で作っている。真実の発見という捜査の本来の目的をおざなりにした」と批判した。
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 大津地検は17日までに控訴を断念し、男性の無罪が確定した。地検は「関係証拠を精査するなどした結果、控訴しないこととした」とした。供述を誘導するような調べなどについて、地検と県警は京都新聞社の取材にコメントしなかった。