多様な芸術家の創造

障害のあるなし超え共生へ

 障害の有無にかかわらず多様な立場の人たちが芸術活動を展開したり鑑賞したりして共生社会の実現を目指す催し「CONNECT⇄ 」(コネクト)が3日から、京都市左京区の岡崎地域にある文化施設を舞台に行われる。

「三人のガラス・リボン」平野智之さんの作品

 昨年まで東京で開催された「ここから展」では、障害者の芸術作品や義足などを展示して共生社会のあり方を考えた。同展の趣旨を引き継ぎ、今年は文化施設が集積する岡崎地域で、名称も新たにして開催する。障害者の作品展示のほか美術館や劇場のあり方を考える鼎談(ていだん)や、障害の有無に関係なく鑑賞できる芸術作品を披露し、共生社会を考えるきっかけにしてもらう。障害者週間(3~9日)にあわせて企画した。催し名は「CONNECT(つながり)」と、双方向を意味する記号「⇄」を組み合わせた。

「三人のガラス・リボン」登坂京太郎さんの作品

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインでの催しを多くしたのが特徴で、哲学者の鷲田清一さん、京都市京セラ美術館の青木淳館長、京都国立近代美術館の柳原正樹館長による鼎談では、共生の時代にふさわしい文化施設のあり方について議論。出品作家へのインタビューや障害者らによる会場施設の紹介動画もウェブ上で発信する。身の回りの音から想像したイメージを紙に描き、意見交換するワークショップ(参加受け付け終了)は、ビデオ会議システムを使って行う。京都市動物園は、振動と光で動物の鳴き声を楽しむオンラインのワークショップ(同)を行う。

「三人のガラス・リボン」米増初音さんの作品

 一方、展示関係では京都国立近代美術館に全体のインフォメーションセンターが置かれるほか、視覚障害者や車いすを利用している人も触れることができる大崎晴地さんの立体作品「ねじれの巡礼」が設置される。視覚障害者が作品鑑賞する同館の取り組みの紹介展示も行う。

「美術館のどうぶつ園」で上映される作品「みずのき動物園」

 京都市京セラ美術館では障害のある3人の作家の作品を披露。同館では、障害者支援施設みずのきの絵画教室で学んだ人たちの作品を元にした、映像作家浦崎力さんのアニメーション映像「みずのき動物園」も上映される。京都市勧業館みやこめっせでは障害者の公募展「第26回京都とっておきの芸術祭」が開かれる。

「みずのき動物園」のイメージのもとになった吉川敏明さんの作品
「みずのき動物園」のイメージのもとになった小笹逸男さんの作品

 京都国立近代美術館の松山沙樹特定研究員は「芸術表現や鑑賞を通じて、施設へのアクセシビリティをよくしたり、多様な人が共生できる社会を考えるきっかけにしてもらえれば」と話している。

「みずのき動物園」のイメージのもとになった中原安見子さんの作品
「みずのき動物園」のイメージのもとになった岡本由加さんの作品

京のつながり、いつか全国へ

文化庁地域文化創生本部 三木忠一事務局長

コネクトの経緯や狙いについて、文化庁地域文化創生本部(京都市東山区)の三木忠一事務局長に聞いた。


 ―2016年から東京で共生社会のあり方を考える「ここから展」を開催してきた。
 「障害者の方々の文化芸術に関しては色々な法整備が進んでいるが、文化施設のアクセスとか作品展示の取り組みでまだ十分でないところがあるのが現状。そこで東京の国立新美術館で『ここから展』を4回開催したが、文化庁の移転を機に京都で開こうということになった」

 ―コネクトの狙いは。
 「京都国立近代美術館に相談したところ、岡崎エリアには文化施設が多くあり、連携することで広がりが出るだろうということだった。美術館や劇場、動物園などそれぞれの強みがある。こういうポテンシャルある地域で開催できることに可能性を感じている。将来的には岡崎から京都、それから関西、全国へというように、いろんなつながりが広がっていけばと考えている。
 コネクトには色々な意味が込められている。障害のあるなしにかかわらない人と人のつながりのほか、文化施設間やオンラインでのつながりもある。新型コロナの影響でオンライン化が進んでおり、今回の京都での初開催は今後のコネクトの形態を探るスタートアップ的な意味があると考えている」

 ―天才アートKYOTOや京都とっておきの芸術祭など、既存の催しも取り込んだ。
 「一緒に集まってやることで、より広がりができると思う。できるだけご協力させていただいて、エリアが発展していくことに尽力していきたい」


 
■概要
【会期】12月3日(木)~20日(日)
【会場】京都市左京区の岡崎地域の各文化施設
【主催】文化庁、京都国立近代美術館
【共催】京都新聞

 

■主な催しと会場=番号は地図に対応
〈展示など〉
◇アーティスト大崎晴地さんの立体作品「ねじれの巡礼」展示(8日~1月24日)
 (1)京都国立近代美術館
◇「感覚をひらく」事業の取り組み紹介(8日~20日)
 (1)同
◇作品展示「三人のガラス・リボン」
 (2)京都市京セラ美術館
◇映像上映「美術館のどうぶつ園」
 (2)同
◇演劇ワークショップ「岡崎地域をガイドする」映像展示(7日~20日)
 (3)ロームシアター京都
◇こねこねコネクトつながる世界 CONNECT⇄天才アートKYOTO(9日~13日)
 (4)京都市国際交流会館
◇京都盲唖院の教材展示
 (5)京都府立図書館
◇「第26回京都とっておきの芸術祭」(10日~13日)
 (6)京都市勧業館みやこめっせ

〈動画配信〉
◇CONNECT⇄ スペシャル鼎談
 哲学者の鷲田清一さんと京都市京セラ美術館の青木淳館長、京都国立近代美術館の柳原正樹館長が、文化施設のあり方について議論
◇「ねじれの巡礼」
 大崎晴地さんのフィールドワークによる書き下ろしを公開
◇「KYOTO AQUATOPE」
 サウンドアーティスト上村洋一さんによる岡崎地域の音を使った作品を配信
◇京都とっておきの芸術祭 出品作家についての映像配信
 作家の制作風景やインタビュー映像を公開
◇オンラインシンポジウム「文化施設へのアクセシビリティを考える」
 京都工芸繊維大のジュリア・カセム特命教授や国立民族学博物館の広瀬浩二郎准教授らが表題について議論 18日午後2時~3時半

※期間を明示していない催しは3日~20日開催。いずれも無料。詳細は公式ウェブサイト参照。