学問研究の政治からの独立性を訴える山添氏(参院議員会館)

学問研究の政治からの独立性を訴える山添氏(参院議員会館)

 -日本学術会議会員候補の任命拒否をどう見るか。

 「大きく三つある。まず任命拒否の理由が示されていない。国会答弁は支離滅裂で崩壊しているのは誰の目にも明らかだ」

 「次に、学問の自由を脅かし政治が科学を支配しようとしている。井上信治担当相がデュアルユース(軍民両用)の学問研究を検討するよう学術会議に求めたように、学術会議が独立性をもって歯止めをかけようとした問題に対して、政治の側がこうあってほしいと迫るものだ」

 「三つ目は、今回にとどまらず、あらゆる場面で人事権を行使して支配するやり方だ。内閣人事局をつくり異論を政治主導で排除する仕組みに変えていった。同じ国家公務員とはいえ、学問の自由や独立性が求めらる学術会議に手を出す。検察庁法改正案のように司法の独立に関わる分野にも介入しようとする。任命権が内閣にありさえすれば好き勝手に人事を左右して支配を強める。ほとんど恐怖政治ではないか」

 -菅首相は任命拒否の理由を問われると、最後は「総合的・俯瞰的」と説明する。

 「首相は、拒否した6人のうち5人は名前を知らなかったと言っている。リストを見た上でではなく、見ていないじゃないかと。総理や官房長官は、安保法制の時に政府法案に反対したから排除したんじゃないとも説明したわけだが、他のあらゆる問題で人事に関することだからコメントしないと言いながら、そこだけはそれが理由じゃないと言った。逆に怪しいですよね。本当に人事に関することを言えないのだったら、何を考慮の要素にしたのかを含めて言えないはず。そこだけことさら否定するのはおかしい」

 -山添さんの法科大学院時代の恩師は、今回任命拒否された早稲田大の岡田正則教授(行政法)だった。

 「行政訴訟の実務的な授業を受けていた。私が弁護士になってからも行政裁判で意見書を書いてもらった。研究者としても実務、実践面でも活躍されてきた方だ」

 「学者や研究者が政治のありように物を言うのは普通のことであり、批判的な視点があってこその学問研究だ。政府を擁護する人も政府を批判する人もさまざまな意見があって学問分野は発展していくものだが、政府が排除するとなると、その人たちの研究や発表をしてはならない、そういった研究は予算を確保できないという恐れにつながり、萎縮的な効果をもたらす。政治の側が排除することを意図していようがいまいが、結果としてそうなるだろうという想像力が必要だと思う」

 -菅首相は学術会議のメンバーは特別公務員であると言う。公務員の身分ではあるが、官僚と同じ扱いにはならないはずだが。

 「同じように考えているのではないか。検察庁法の時も一般の公務員と同じ、としきりに言っていた。しかし検察官は準司法官で司法の一翼を担う存在。そこに政治が介入するのは御法度であり、一般公務員とは違って独立性を尊重する、また内閣の一存で定年延長を認めるか認めないかとする立場は取らないとなっていた。給与の体系も法律上違う。なのに一般の公務員と同じと捉えて介入を正当化しようとした。それとほとんど構図は同じだ」

 -共産党など一部野党は日本学術会議法や学問の自由を規定した憲法23条に反すると指摘している。法律家の見地を踏まえ意見を。

 「1983年に推薦制を導入した際の国会で当時の中曽根首相は『形式的任命だ。上がってきた推薦をそのまま任命する』と述べ、学問の独立性は担保されると答弁している。それに対して任命権で、任命するかしないかを政府が主体的に判断できるとなると、学術会議法の規定、趣旨に反する。憲法23条にも反することだと思う」

 -法律の解釈変更があったかどうかも論点となり、政府と見解が分かれた。

 「明らかに解釈変更ですよね。なのに内閣府の学術会議事務局が2018年にまとめた平成30年文書で推薦された通りに任命する義務はない、とした。政府は解釈は変わってない、一貫していると答弁しているが、その解釈は2年前に初めて出てきたもので、それまでは一切どこにも書いていない」

 「一方、解釈変更でいうと、検察庁法の時に、(野党から)なぜしたのか、手続きはどうなのかとかなりやられたので、今回はそう言いたくなかったんじゃないか」

 「法制局の言い分では、解釈変更かそうでないかがなぜ決まるかというと、社会情勢が変わってそれに合わせて変える場合は解釈変更。そうでない場合は解釈が変わったわけではないと。分かったような分からないような話だ。検察庁法の時に懲りたから解釈変更論を採らなかったのだろう」