原画ダッシュ作品。竹宮惠子の「青い夕暮れ」 (C)竹宮惠子

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 京都国際マンガミュージアム(京都市中京区)は京都精華大と京都市の共同事業で2006年に開館した。「『国際』の名を意識するようになった」と京都精華大国際マンガ研究センター研究員の伊藤遊さんは言う。漫画は日本が世界を主導する文化だ。同館には各国の博物館や大学から問い合わせがある。

 漫画文化研究でも中心的な役割を担う。日本には漫画関連文化施設が約70あるが、大量に出版された本や資料を1館で保存することは不可能だ。各館の得意分野を生かして相互補完的に取り組む必要がある。同館は研究者のいる機関として、そうした取り組みを引っぱっている。

 研究者の視点は展示内容にも注がれる。漫画は書店などで同じものを手にできるため、ミュージアムならではの付加価値が必要だ。例えば「クッキングパパ」の作者を招いて、作品に登場する料理を作ったり、漫画家の師弟関係を紹介し作品のルーツを深掘りしたりする。

 

原画ダッシュ作品。東浦美津夫の「キノコちゃん」(C)東浦美津夫

近年、漫画は「日本の文化」と言いはやされるようになったが、伊藤さんは文化と持ち上げられることで表現が抑制されないかと懸念も抱く。「漫画はアンダーグラウンド性を持つ。エロスやバイオレンス、時に差別的な表現もある」。その懐の深さこそ魅力だからだ。

 漫画家で京都精華大前学長の竹宮惠子さんが1976年に発表した「風と木の詩」は、少女漫画ではタブーとされた性的な問題に踏み込み、少年愛を本格的に描いた。社会に衝撃を与えたが、人間性への深い洞察は今でも高く評価される。

 「タブーがあれば、ずらして表現するのが庶民のインテリジェンス」と伊藤さんは言う。時には求める表現のため常識破りにも挑戦する。そうした熱意が豊かな作品を生んできた。その豊かさをつないでいくため、例えば「なぜおっぱいの大きな女の子が大勢出てくるのか」という表現の社会背景や歴史に基づく理論構築が必要だ。

 

漫画雑誌がずらりと並ぶ地下の研究閲覧室。18歳以上の人は登録すれば読むことができる。雑誌好きの人には宝の山だ

来館者は開架された5万冊の蔵書を楽しみに訪れる。だが、地下には漫画雑誌などその5倍の資料がある。18歳以上の人なら登録して閲覧可能だ。「雑誌は懸賞や広告も含め、時代の空気に満ちている。ぜひ読みに来て」と伊藤さんは呼び掛ける。

 

京都国際マンガミュージアム デジタル技術で漫画原画のきわめて精巧な複製を作る「原画ダッシュ」プロジェクトを20年近く行っている。竹宮惠子をはじめ高橋真琴、水野英子、上原きみ子ら26人850点のコレクションは、原画の持つ繊細なタッチや華麗な色彩、制作時の指示やスクリーントーンを貼った表面までもそのまま再現、オリジナルを損なうことなく公開することが可能だ。京都市中京区烏丸通御池上ル。075(254)7414。