政府の成長戦略会議が、経済政策の方向性を示す実行計画をまとめた。中長期を見据えた戦略の策定は、菅義偉政権で初となる。

 「わが国企業の最大の課題は生産性向上だ」とする菅首相の意向を踏まえる形で、企業の合併・買収(M&A)を含めた規模拡大の支援策や、脱炭素化に向けて技術開発を後押しする基金を設けることなどを盛り込んだ。

 だが、新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、多くの企業は需要の落ち込みに苦しんでいる。人的、物的資源を成長に振り向けられる余裕があるとは言い難い。

 まずはコロナ禍による経営悪化を乗り越えられる支援を進めるべきだ。企業の前向きな投資を引き出し、経済成長につなげる施策の実効性が問われる。

 中小企業政策では、事業譲渡を受ける企業への税制優遇措置を検討するとした。中小から中堅へ成長途上にある企業が金融支援を受けられるよう、資本金による制約も緩和するという。

 日本の労働生産性は先進7カ国で最も低く、特に中小企業は大企業の5割程度にとどまっている。中小企業が合併や再編、事業転換などで規模を拡大できれば、生産性が向上し、1人当たりの所得も高められる、との考えだ。

 後継者難にコロナが追い打ちをかけ、廃業する中小企業が増えている。合併のハードルが下がれば雇用を維持する効果は期待できよう。ただ、企業規模の拡大が生産性を高める根拠は不明で短絡的だ。再編ありきの改革では中小企業関係者の反発を招きかねない。

 脱炭素化に向けては、2040年までに大型火力発電30基分に相当する洋上風力発電の需要創出を目指すことなどを盛り込んだ。

 ただ、30年度の電源構成目標をどう見直すかの議論は経済産業省で10月に始まったばかりだ。50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする政府目標をどう実現するのか、道筋がみえない。

 実行計画は大きな経済構想というより、菅首相が関心を抱く個別の政策を盛り込んだ印象が否めない。

 成長戦略会議は10月半ばに初会合を開いてから、わずか1カ月半で計画をまとめた。前政権の経済政策を検証し、コロナ禍の経済情勢を踏まえて議論が尽くされたとはいえまい。

 政府は一連の施策を現在検討中の追加経済対策に反映させる方針だが、長期的な検討が必要な課題も多い。コロナ後の社会像を示すには腰を据えた議論が不可欠だ。